2024年4月30日火曜日

モチノキの幹に穿孔するヨシブエナガクチキムシ

 昨年、虫仲間に教えられて多数のヒメアカホシテントウを見たモチノキですが、今度はその木にヨシブエナガクチキムシ Platypus calamus が集まっていると、やはり同じ方に教えていただきました。見に行くと、ひとかかえほどある幹の周囲のあちこちでこの虫が穴を掘っています。以前にを一度ずつ掲載したことはありますが、このようにたくさんの個体が集まって穿孔しているところを見るのは初めてです。
薄暗い場所なので撮影時には気づかなかったのですが、あちこちで穴を掘ったり歩き回ったりしていたのはほとんどが♂で、♀は2匹しか写っていませんでした。♂では上翅端が釘抜きのような形になっていることで見分けられます。数日後に再度確認した時も、多数の♂に対して♀は1匹だけでした。
ヨシブエナガクチキムシやカシノナガキクイムシは養菌性キクイムシと呼ばれ、食料となる菌類の胞子を生まれた巣から新しい巣へと自ら運び、坑道内で繁殖させてそれを食べるという生活をしています。重要な樹木害虫なのでネットを検索すると多数の資料が見られますが、こちらの資料から今回撮影した状況に関連する部分を拾い読みすると、まず♂成虫が繁殖に適した木に飛来して深く穿孔し、♀成虫がやってくると一度巣外に出て交尾、次に♀が先に、続いて♂が孔道に進入、♀は♂の掘った孔道をさらに伸長させ、運んできた菌類の胞子を植え付けてから産卵、孵化した幼虫が成虫になるまで♀成虫は巣の内部に、♂成虫は入り口近くにいて幼虫の出した木屑や排泄物を排出したり外敵の侵入を阻止したりという役目を果たすと、大略このようなことが書いてありました。♂ばかりがたくさん、穴掘りに勤しんでいた理由もこれで説明できそうです。

穴掘りを始めたばかりの♂。上翅端まで約3.4mmです。

こちらはだいぶ進んでいます。

これも♂です。

♂の上翅端。

画面下の2匹は♂ですが、上の1匹は♀です。上翅端まで約3.6mm。

上の♀の上翅端です。

♀の前胸背板に細かな穴が集まっているように見えますが、これがマイカンギア(Mycangia、菌嚢)といって、共生菌を貯蔵し、運ぶための器官だそうです。

♂の前胸背板にもよく似た点刻がわずかに見えますが、こちらは機能していないのかも知れません。

これも♀で、穴に入ろうとしているように見えますが、すでに交尾を済ませたんでしょうか。

孔の入り口に♂の上翅端が見えています。このような状態もいくつか見ましたが、すでに穴の奥では♀が産卵の準備を始めているんでしょうか。

(2024.04.16・明石公園)


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