2025年4月30日水曜日

クヌギトゲマダラアブラムシとツヤコバチの一種

 コナラのひこばえの、まだ柔らかい新葉を裏返してみると、白いアブラムシがたくさんついていました。他の葉を探すと黄色い有翅成虫も見つかり、背面に並んだ突起などの特徴から、クヌギトゲマダラアブラムシ Tuberculatus capitatus のようです。しばらく撮影していると、幼虫の周りを小さな黄色いハチが歩き回っているのに気がつきました。ツヤコバチの一種で、アブラムシに寄生する仲間でしょう。しきりに産卵の機会を狙っているように見えましたが、カメラで追い回したせいか産卵には至らず、やがて見失ってしまいました。アブラムシに寄生する黄色いツヤコバチは以前のブログでも2度出しています。こちらこちらですが、前者によく似ているようで、あるいは同種かも知れません。

小さな幼虫は白っぽく半透明の体です。1齢から2齢くらいでしょうか。

体長約0.8-1.0mmくらいです。

体長2mmほどの大型の有翅幼虫もいました。

有翅成虫もちらほら見られました。体長約2.6mm、翅端まで3.8mmです。

幼虫を狙っているツヤコバチ。体長約1mm、翅端まで約1.3mm。


広い葉の上を歩いては何匹もの幼虫を物色していましたが、期待した産卵場面は見せてくれませんでした。

(2025.04.25・明石公園)





2025年4月27日日曜日

ニッケイトガリキジラミ・羽化の季節

 アラカシのカシトガリキジラミにひと月ばかり遅れて、ヤブニッケイのニッケイトガリキジラミ Trioza vinnamomi が羽化の最盛期をむかえていました。カシトガリの場合は葉裏に寄生した幼虫が終齢まで成長しても葉の表側にはほとんど変化がなく、裏がえしてみないと存在がわかりませんが、こちらの方は寄生された葉には表面にいぼ状の突起、ニッケイハミャクイボフシという虫こぶが生じ、さらに幼虫の成長につれて葉の全体が丸まってくるので一目でわかります(こちらの記事)。この日はあちこちのヤブニッケイで羽化直後の成虫が多数見られましたが、残念ながらちょうど羽化の最中というのは見つかりませんでした。
羽化した成虫は間もなくヤブニッケイの新葉に産卵し、葉の表面には小さな虫こぶができはじめます(こちら)。


画面中央上寄りに羽化前の終齢幼虫(ピンぼけですが)が見えます。また下半分に4つほど見えている白い円盤はヤブニッケイシロカイガラムシの♀成虫だと思います。



ここに出していないものも含めて、この日撮った写真を調べるとなぜか♀ばかりでした。

(2025.04.22・明石公園)

2025年4月24日木曜日

マスダアラカシタマバチ(両性世代)の産卵

 このブログではたびたび登場している、マスダアラカシタマバチ Plagiotrochus masudai です。この日、公園内のあちこちでアラカシの新梢に産卵する姿が見られました。これは両性世代の♀で、単性世代の♀(その名の通り♀しか存在しませんが)とは体色が別種のように異なります。両性世代なので♂が存在するわけですが、数は少ないようで、2年前の記事と合わせてこれまでに2度しか見たことがありません。興味深い生活史を持つタマバチですが、それについては過去の記事にいろいろ書いているのでここでは省略します。







(2025.04.22・明石公園)

2025年4月20日日曜日

クロコノマチョウ・越冬明け

 越冬明けのクロコノマチョウ Melanitis phedima です。薄暗い木の下から飛び出してきて、ちょど日の当たる場所にとまってくれたのは好都合でしたが、2、3枚撮ったところで間が悪く人が通りかかり逃げていきました。翅の色が明るいので♀かとも思いますが、翅がだいぶ傷んでいるせいもあって今一つはっきりしません。秋に撮った♂はこちらに出しています。幼虫はこちらのようになかなか魅力的な姿をしていますが、この近辺ではまだ見たことがありません。


(2025.04.17・明石公園)

2025年4月19日土曜日

ジェーンアシワガガンボ?

 いつもの公園で多数のガガンボが発生している、という情報をいただいたので、早速見に行ってきました。場所は幹が地上付近で数本に分かれたエノキで、その幹の間に出来た窪みに溜まったわずかな水の中から羽化してきているらしいのです。最初に出かけた日は強い西風が吹いていてあまり期待していなかったのですが、幹の周りで♀2匹♂3匹が見つかりました。♂は風にも負けずときどき飛び回っています。また小さな水たまりには一見何かの糞のような黒っぽい抜け殻がいくつも残されていました。さらにその二日後に見に行くと、交尾中のペアひと組の他に2、3匹の♂が、やはり落ち着きなく幹の周りを飛び回っていました。羽化した成虫が何日間もその場に留まっているとは思えませんし、今回情報をくれた方の話からも、どうやらしばらくの間は連日羽化が続いていたようです。
さてこのガガンボの種名ですが、ネット上でジェーンアシワガガンボ Tipulodina joana として多数の画像が見られるものによく似ています。中でも「廊下のむし探検」のこちらの記事では同種の特徴が詳しく調べられていました。ただこの Tipulodina 属にはもう一種、T. nipponica(ニッポンアシワガガンボ)という種が存在して、両種を区別する特徴については上記の記事にもほとんど説明がありません。そこでさらに探してみると、「YAHOO!知恵袋」という質問サイトにこちらのような記事がありました。孫引きになりますが、東海大学出版の「日本産水生昆虫」によるとT. joanaは「後脛節基部近くに幅の広い白色帯を有し、ふ節は広く黒色」、T. nipponicaは「後脛節は基部近くに幅の狭い白色帯(3mm)、ふ節は第1ふ小節と第5ふ小節の一部を除き白色」ということです。その説明をもとにあらためて画像を調べてみると、今回のガガンボはやはりジェーンアシワガガンボでよさそうだという結論に達しました。ただしふ節については、♂ではほぼ黒色ですが♀では各脚に白、あるいは淡色の部分があり、少し疑問も残るので、タイトルには“?”をつけておきます。

これは最初の日にいた♂。脚が細くてやたらと長いので、老眼ではファインダーを覗きながらちゃんと画面に収めるだけでも結構苦労します。

同じ♂です。体長約19mm。こうして見ると、長い脚でもそれなりにバランスが取れているようです。

同じ♂の翅です。

こちらが♀。

おそらく羽化直後でまだ体色が整っていないようです。体長は約29mm。

同じ♀の顔です。

発生源はここ。

2度目に訪ねた時にいた交尾中のペア。はじめは水たまりの周りを飛び回っていました。落ち葉の上に黒い脱皮殻が見えます。

ようやく幹にとまってくれました。


脱皮殻を拾いあげました。長さは30-34mmくらいです。

(2025.04.15/17・明石公園)



2025年4月13日日曜日

ヤノイスアブラムシの幹母幼虫

 いつも見ているイスノキの、ようやく開いてきた新葉を探してみると、あちこちに小さな膨らみができていました。ヤノイスアブラムシ Neothoracaphis yanonis の寄生によって生じるイスノキハタマフシという虫こぶの初期段階です。ほとんどの膨らみではすでにアブラムシは内部に隠れしまっていますが、1匹だけまだ姿を見せていました。この春に孵化して、やがて幹母となる幼虫です。



体長は約0.35mm。アブラムシが吸汁することによって周囲の葉の組織が盛り上がり、やがてドーム状の閉じられた部屋が出来上がります。成長した幹母はその中で産卵を始めることになります。

顕微鏡写真風に透過光で撮ってみました。

これはすでに閉じられた虫こぶです。

幼虫の脱皮殻が残っていました。

ヤノイスアブラムシは世代によって寄主植物を変える移住性アブラムシで、一次寄主のイスノキと二次寄主のコナラを行き来しています。コナラ上の成虫や幼虫、イスノキの虫こぶ内の様子など、過去に何度も投稿していますが、それらはこちらの記事の最後にリンクを貼っておきました。興味のある方はご覧ください。

(2025.04.08・明石公園)



2025年4月7日月曜日

ビロウドツリアブ

 春先の野山を歩くとよく目につくビロウドツリアブ Bombylius major ですが、撮影したのは久しぶりです。最近は町中の公園ばかり徘徊しているので目にする機会が減ったという事情もありますが、かなり敏捷な虫で見つけてもたいがい撮る前に飛んで行ってしまうということもあります。たかが普通種という気持ちもあって時間をかけて追い回す気にもなりません。それが今回の個体は珍しく大人しくしていてくれたので以前のブログで2016年に出して以来9年ぶりに登場することになりました。
ツリアブの仲間はどれも寄生性ですが、この種はヒメハナバチ類に寄生するそうです。そして他のツリアブ類と同様、産卵の前には地上に降りてお尻を砂地にこすりつけ、腹端にある「砂室」に砂粒を取り込むと言う面白い習性が知られています。卵に砂をまぶして寄主の目を誤魔化すためと言いますが、それがどんな風なカムフラージュなのか、以前にもちょっと資料を探してみましたが具体的な説明は見つかりませんでした。この砂集めの様子は本種ではまだ見たことがありませんが、以前にスキバツリアブマエグロツリアブで同じ行動を撮影しています。



帰宅してからこの写真を見て、左の翅にマルトビムシが!と驚いたのですが、よく見るとトビムシが乗っているのはちょうど翅に重なった枯葉の棘の上でした。

アングルを変えながら何枚も撮っているうちに目を覚ましたのか、翅を拡げて震わせはじめ、やがて飛び去りました。


(2025.04.03・舞子墓園)

2025年4月5日土曜日

ゴミグモの一種・幼体

 キンモクセイの葉の葉柄近く、縁が丸まって少しくぼんだところに隠れていたゴミグモの仲間です。最初普通のゴミグモ Cyclosa octotuberculata だと思ったのですが、腹端の形がちょっと違うような気がしてきました。体長5mmほどで、また触肢が膨らんでいないのでおそらく♀の幼体でしょう。体を寝かせた格好で窪みに収まっていました。参考までに、同じくらいの大きさの“普通”のゴミグモの♀幼体はこちら、♂幼体はこちらにあります。





(2025.03.21・明石公園)


2025年4月4日金曜日

ヒレルクチブトゾウムシの顔(深度合成)

 先日、2種のノミゾウムシを採集した際についでに持ち帰ったヒレルクチブトゾウムシ Pseudoedophrys hilleri です。深度合成画像は以前にも出していますが、今回は時間がなく顔面だけにしておきました。


(2025.03.20 神戸市西区伊川にて採集)


2025年4月3日木曜日

アズキナシオオアブラムシとヒラタアブの幼虫

 先日、蟻牧亀虫というブログのこちらの記事を見てアレ、と思い、調べてみると、当ブログでも何度も登場しているナシミドリオオアブラムシ Nippolachnus piri の分類が再検討されて、おなじみのシャリンバイにつく種はアズキナシオオアブラムシ N. micromeli に変わっていました。2018年の論文ですから7年も前のことです。種名が変わったと言っても新種として記載されたわけではなく、もともとアズキナシから得られた標本を N. micromeli として100年も前に記載していたのが後に N. piri のシノニムとして統合され、それが最近の研究によって再び N. micromeli として独立したということのようです。
長年同一種とされていたくらいですから生態写真などで区別できるはずもないと思いますが、寄主植物ははっきりと分かれていて、N. piri(ナシミドリオオアブラムシ)はナシとビワ、N. micromeli(アズキナシオオアブラムシ)はアズキナシ、ナナカマド、シャリンバイにつくということなので、そこから判断しても間違いはないでしょう。つまり以前のココログ時代も含めて当ブログに登場したナシミドリオオアブラムシはどれもシャリンバイに寄生していたものなので、すべてアズキナシオオアブラムシに訂正しなければならないことになります。

以上のように前置きをしておいて、ようやく今回の本題です。

シャリンバイの葉裏で、アズキナシオオアブラムシの幼虫がヒラタアブの幼虫と向かい合っていました。ヒラタアブの幼虫はアブラムシの口吻を捕まえているように見えます。


綱引きのような格好で、アブラムシはなんとか逃れようとしているようですが、相手が放してくれません。



太い口吻(鞘)から細い口針がはみ出しています。
以前に見たヨツボシテントウの幼虫は、常にアブラムシの脚の1本にかじりついてそこから体液を吸い取ってしまうということですが、このヒラタアブの幼虫もそれに似た芸当ができるんでしょうか。

(2025.03.21・明石公園)