2020年8月21日金曜日

カメムシ卵から出て来るナガコバチ科 Anastatus sp.雌雄

昨日の記事の、寄生を受けているらしいカメムシ卵はそのまま持ち帰り、毎日様子を見ていたのですが、15日目の朝、ようやく2個の卵で穿孔作業が始まっていました。

卵塊にくっついていたタマゴクロバチの♀は数日後に死んでしまい、また1個の卵ではなぜか蓋が凹んでしまっています。

しかし穴から顔を覗かせたのは、あのタマゴクロバチではありません。

見覚えのある顔です。

充分な大きさに穴を拡げるにはまだ時間がかかるだろうとのんびり構えていたところ、不意に出てきました。

頭に続いてごく短い時間で全身が出てしまい、倍率を下げるのが間に合わず途中が撮れませんでした。出てきたのはお馴染みの、ナガコバチ科 Anastatus 属の一種、♀です。よく見かける種で、先日別のキマダラカメムシ卵にとまっていたのもおそらく同種でしょう。

その間にもう一つの卵でもだいぶ穴が拡がっていましたが、そこから覗く顔は最初のとは色が違います。

やはり、前触れなくいきなり頭を出してきました。

しかし今回はそこで若干手間取ったので、その間に急いで倍率を下げます。

太い触角はまだ蛹殻に覆われています。

欲を言えば背面からではなく真横から撮りたかったのですが、角度を変える余裕がありません。

出てきたのは♂でした。後脚で翅を伸ばしています。以前、やはりカメムシ卵から出てきたものと同じ種のようです。その時出てきたのは♂ばかりで、それはおそらく寄主の卵が小さかったせいと推測されますが、今回はサイズに余裕があったので雌雄両方の寄生卵が産み付けられたのではないかと思われます。
この11個の卵塊からは翌々日に♀がもう1匹出てきましたが、他は死んでしまったのか、その後ハチもカメムシも出て来ることはありませんでした。

(2020.08.05・自宅にて撮影)

2020年8月20日木曜日

カメムシ卵とタマゴクロバチの一種

コナラの葉裏に産み付けられたカメムシの卵に、タマゴクロバチ(ハラビロクロバチ科)の一種が乗っていました。

大きさからするとキマダラカメムシの卵のようですが、多くはすでに寄生されているのか黒い影が透けて見えます。

触角が片方失われています。最初♀の羽化を待つ♂かと思いましたが、残った左の触角を見ると♀のようです。

タマゴクロバチはどれも同じように見えて区別が難しいのですが、これまでに撮影したものの中ではこちらによく似ていて、同種かも知れません。

♀であれば産卵行動が見られるかと期待しましたがそんな様子もありません。この卵から何が出て来るか見たいのでハチごと卵塊を採集して帰りました。

(2020.07.20・明石公園)


2020年8月19日水曜日

ニセウチワヒゲムシ属の1種(Lepocinclis sp.)

ずんぐりしたミドリムシだと思って調べてみると、ミドリムシ(Euglena)ではなくニセウチワヒゲムシ(Lepocinclis・レポキンクリス)の一種のようです。淡水微生物図鑑に載っている Lepocinclis salina によく似ていて、この学名で検索するとよく似た画像がいくつか出てきました。写真だけ見るとウチワヒゲムシのように扁平であるかのような印象を受けますが、動画を見れば分かるとおり瓜のような回転楕円体です。ユーグレナ運動はしません。



動画です。


(2020.07.22・明石公園 桜堀にて採集)

2020年8月18日火曜日

ボルボックスの有性群体

昨日の動画にも登場しましたが、ボルボックス(Volvox sp.)の有性群体(Sexual spheroid)です。

群体内に散らばっているオレンジ色の球体が受精卵ですが、初めて見た時にはこれも初期娘群体かと思いました。

ほとんど動かなかったので深度合成撮影。ただし手前側半分にしかピントを合わせていないので受精卵の数が少なく見えます。


受精卵は円錐形の棘に覆われています。

群体表層の体細胞。細胞を繋ぐ連結糸と、鞭毛もどうにか見えます。

動画です。


(2020.07.17・明石公園 剛の池にて採集)


2020年8月17日月曜日

ボルボックスの遊泳

先日の記事の動画を撮影した5日後、今度は同じ公園の別の池でたくさんのボルボックス(Volvox sp.)が採れました。前回はまだ娘群体を持たない、小型の若い群体がほとんどでしたが、今回は内部に娘群体を持った大型の群体が多く、また赤っぽい色の受精卵を持った有性群体、それに誕生後間もないと思われる小さな群体もたくさん見られます。


この有性群体は、最初手元の図鑑やネット上でも画像が見つからず、どういう状態なのか分かりませんでした。調べてみるとボルボックスの培養株では有性群体や卵の観察は難しいということで、画像や動画が少ないのはそのせいかも知れません。

(2020.07.22・明石公園 桜堀にて採集)

2020年8月16日日曜日

産卵するナシグンバイとホソハネコバチ

先日、ホソハネコバチの一種の産卵を見てからサクラの葉裏のナシグンバイが気になります。

産卵中らしい成虫がいました。

腹端を葉面に着けています。

やはり驚かせたようで、すぐに腰を上げました。

この後、♀はその場を離れてしまいました。なんとか刺激を与えずに撮影する方法を考えないといけません。

♀が立ち去った後にホソハネコバチが1匹(実は1枚目にもピンボケで写っています)。

上の写真の一部拡大。ホソハネコバチが触角で探っている卵は、他の卵のような黒いタール状物質の覆いがありません。おそらくこちらが邪魔をした時に産卵中だった卵で、覆いが無いのはそのせいではないかと思います。

産卵を始めました。多分この後も産卵が続くのでしょうが、先日散々撮ったので今回はこれで切り上げました。

(2020.08.06・明石公園)


2020年8月15日土曜日

ヨツモンシガニセクビボソムシ(Shigaderus nakagawayui M. Saitô & Young, 2015)

これは以前のブログで8年前、ニセクビボソムシ科の一種として掲載していたもので、当時甲虫図鑑などを調べても該当する種が見つかりませんでした。その時点では未記載だったようですが、滋賀県大津市で多数の個体が採集されていて、それらの標本をもとに2015年11月に日本甲虫学会の斎藤昌弘氏によってヨツモンシガニセクビボソムシ(Shigaderus nakagawayui M. Saitô & Young, 2015)と命名・記載(新属新種)されました。
また2014年7月に採集してお送りした5頭の標本は斎藤氏により同定され、「月刊むし」No.547(2016年9月号)にヨツモンシガニセクビボソムシの追加産地(兵庫県明石市)として報告されています。
今回は数年ぶりの再会で、サクラの葉裏で静止していたものですが、数枚撮影すると動き出したのでそのまま採集して深度合成撮影に供しました。

これまでに撮影した個体はすべてこのように広葉樹の葉裏で静止しているだけでした。夜行性なんでしょうか。体長約1.8mmです。
以下深度合成。








(2020.08.06・明石公園にて採集)