2025年5月9日金曜日

ムネアカアワフキの交尾と産卵

 サクラの葉を見上げながらムネアカアワフキ Hindoloides bipunctata を探していると、ちょうど交尾中のペアがいました。




図鑑やネット情報によると赤い部分が小楯板だけなのが♂で、それが前胸背まで拡がっているのが♀ということなので、画面右が♀でしょう。体のサイズも♀の方が大きいようです。ただし赤い部分については、多くの個体の中には中途半端で判別の難しいものも結構見つかります。

後ろから。

これは別の葉にいた個体で、どちらとも言い難い色合いです。♂だろうか♀だろうかと考えながらファインダーを眺めていると、体を起こした瞬間産卵管が見えました。産卵中だったと気づいたときにはすでに終わっていて、撮れたのはこのピンボケ1枚です。

移動を始めたのを2度目のチャンスを期待してしばらく追いかけていると、やがて葉柄の、花外蜜腺のあたりに腹端を付けました。角度が悪くてよく見えません。

やがて腰を上げた時に、ようやく産卵管が見えました。意外に短いです。

その後、他にも産卵中の♀がいないかと探し回って何とか撮れたのがこの1枚。やはりタイミングを逃して産卵管はすでにしまい込まれていますが、葉脈に産みこまれたばかりの卵が見えます。
サクラの枝先でよく見つかる貝殻状の物体がこのムネアカアワフキの幼虫巣だということは最近になって教えてもらったのですが、葉に産卵しているのはちょっと意外でした。孵化後しばらくは葉から吸汁するのか、あるいはすぐに枝先に移動するんでしょうか。孵化直後の幼虫を見たいものです。

(2025.05.01・明石公園)


2025年5月8日木曜日

エノキハトガリタマフシとエノキトガリタマバエ幼虫

 エノキの葉に、小さな砲弾型の虫こぶが出来ていました。タマバエ科のエノキトガリタマバエ Celticecis japonica によって作られた、エノキハトガリタマフシと呼ばれる虫こぶです。

高さは6mmくらいで葉表にも、

葉裏にも出来ています。

一つ開いてみると、まだ小さいタマバエの幼虫が1匹だけ入っていました。

体長は約1.5mmで、まだ1齢くらいでしょうか。薄葉重著「虫こぶハンドブック」によるとその生活史は「3~4月に羽化し、新葉に産卵、5~6月に虫えいごと地上に落下して、幼虫状態で越夏・越冬する。」とあります。1年の大半をこの虫こぶの中で、幼虫として過ごすわけです。

(2025.05.01・明石公園)


2025年5月7日水曜日

フタナミトビヒメシャク

 トウネズミモチの葉の上にとまっていた蛾で、フタナミトビヒメシャク Pylargosceles steganioides だと思います。ネット情報によると春型(1化)と夏型(2化)で見かけがかなり異なり、夏型では斑紋が不鮮明になるそうですが、これはもちろん春型ですね。また♂では触角が櫛歯状になるらしいのですが、下の写真ではよく見えません。幼虫はいろいろな植物を食べるようで、ネット上でも多数の画像が見られますが、顔面の模様に特徴があるようです。見たことがあるような、無いような。芋虫毛虫の写真も撮ってはいるのですが、ほとんどは名前も調べず放置しているので、探せばその中にあるかもしれません。前翅長約12mmです。



(2025.04.30・明石公園)


2025年5月6日火曜日

アベマキ幹に集まるクヌギハバチの幼虫たち

 何気なく眺めていたアベマキの幹で、ハバチの幼虫が丸まっているのに目がとまりました。ひょっとして蛹化の準備だろうかと思いながら周りを見ると、幹や太い枝で多数の同じ幼虫がくっついていて、どれも同じように丸くなったまま動きません。このアベマキの木では毎年のようにこのハバチ幼虫が葉についているのを見ていましたが、こんなふうに多数が幹や枝に集まっているのを見たのはこれが初めてです。おそらく毎年同じ光景が繰り返されていたのに気づかなかっただけでしょう。
この幼虫については何年も前に一度調べてみたものの正体が分からず、そのまま放置していたのですが、今回もう一度ネット情報を探してみました。アベマキにつくのだからクヌギにもつくだろうと、試しに“クヌギハバチ”で検索するとこちらのリストにその和名が見つかり、さらにその学名 Apethymus kunugi Togashi, 2005 で再検索するとこちらの論文が出てきました。その中で本種についての解説や載せられている幼虫の写真を見るとどうやら当たりのようです。生活史の説明には宿主として新たにコナラが記録され、他のコナラ属の種もこのハバチの宿主となる可能性がある、とされているので、アベマキもその一つになるのでしょう。また飼育下では成熟幼虫は土中に潜ったということなので、アベマキの幹に集まっていた幼虫もやがて幹から下りてきて土中で蛹化するのだろうと思います。成虫は秋に羽化してくるそうなので、気を付けていれば見られるかと期待しています。





まだ葉に残っている幼虫もかなりいました。

いつ見てもこの格好でじっとしていますが、食事は夜間にするのでしょうか。

(2025.04.30・明石公園)


2025年5月5日月曜日

オドリバエ科 Rhamphomyia SP.

 先日のクロアシボソケバエにちょっと似ていますが、こちらはケバエではなくオドリバエの仲間です。アカメガシワの、その名の通り赤い毛におおわれた新葉の上に乗っていました。幸い翅脈もはっきり写っているので、いつも参考にしている三枝豊平さんの“日本産双翅目の図解検索システム Ⅰ オドリバエ科”の検索表を辿ってみると、いくつか写真では確認できない部分も残るものの、Rhamphomyia(ホソオドリバエ属)の特徴によく一致します。MNDの翅脈図を見てもよく合っているのでこの学名でネット検索すると、昔の自分の記事が出てきました。今回と同様♂個体で非常によく似ていますが、翅の色が少し違うように見えるので別種かもしれません。それにしても、撮った写真もその後の身元調査も13年前と全く同じことをやっているのに我ながら笑ってしまいます。こちらの記事の♀も同属だと思います。




(2025.04.30・明石公園)



2025年5月4日日曜日

ホンクロホシテントウゴミムシダマシ

 引き続き三木山です。何の木か確認し忘れましたが、その幹を歩いていたホンクロホシテントウゴミムシダマシ Derispia maculipennis です。普通種ですが、近所の公園にはいないので久しぶりの撮影でした。以前はただ(?)のクロホシテントウゴミムシダマシと呼ばれていたはずですが、いつの間にか頭に“ホン”がついていたようです。推測するに、国内の Derispia 属9種のうち本種以外の8種もすべて○○クロホシテントウゴミムシダマシという和名がついているし、“クロホシテントウゴミムシダマシ” は属の和名でもあるので、混同を避けるためでしょうか。そう言えば、子供の頃(半世紀以上前!)に買ってもらった図鑑ではオオスズメバチは単に“スズメバチ”で、ナミテントウは“テントウムシ”、ナミアゲハは“アゲハ”でした。
それはさておき、本種はこのあたりでもちょっと低山に入ると樹幹で普通に見つかりますが、地衣類などを食べているようです。同じ場所で暮らしている幼虫はこちらに出しています。



全体のプロポーションはテントウムシそのものですが、顔を見ると複眼は小さいし、数珠状の触角は確かにゴミムシダマシです。


(2025.04.27・三木山森林公園)


2025年5月3日土曜日

クロアシボソケバエ

 引き続き三木山森林公園で撮った虫です。
何の木か忘れましたが、葉裏にとまっていた真っ黒のケバエです。ネット上には同種と思われる画像がクロアシボソケバエ Bibio holomaurus としてたくさん見られますが、おそらくよく似た種も多いだろうし、何か決め手があればと思って探すと、運よく「廊下のむし探検」でこの種が取り上げられていました。このブログでは毎回、採集した標本の各部の顕微鏡写真を示しながら、専門論文の検索表から同定のポイントを嚙み砕いて詳しく説明されていて、私のような素人には大変参考になります。今回撮影した写真をその記事に照らして調べてみると、いくつか確認できない部分は残りますが多くの特徴は一致しました。他に酷似種が存在しなければクロアシボソケバエとしてよいと思います。





左右の複眼が接しているので♂ですね。

(2025.04.27・三木山森林公園)