2025年5月15日木曜日

マガリケムシヒキの産卵

 最近いつもの公園でご一緒することの多い虫探しの達人のFさんが、産卵中のマガリケムシヒキを見つけました。イネ科らしき枯草の折れた茎の先端にとまり、腹端を茎の穴に差し込んでいます。幸い、何枚か撮る間その姿勢でいてくれましたが、まもなく腹端を抜いて飛んでいきました。茎の穴を覗き込んでみると、内径0.7mmばかりの筒の奥に詰め込まれた複数の卵が見えます。この季節、公園を歩けば必ず何匹かは見かける普通種ですが、?十年も虫撮りをやっていて産卵行動を見たのはこれでやっと二度目で、一度目は14年も前のことでした。貴重な場面を見つけてくれたFさんに感謝するほかありません。
その一度目では、本種がエノキの樹皮の隙間に腹端を差し込んで産卵していました。林の中で見かけることの多い種なので産卵も樹幹で行われるのかとその時は解釈していましたが、今回は完全に開けた場所なのが意外です。
ムシヒキアブ類の幼虫は、生態が分かっているものでは地中や朽木の内部で他の虫や幼虫を捕食して暮らしているものが多いようなので、この卵から孵化した幼虫もおそらく地面に降りて地中生活を送るのでしょう。以前に一度、アラカシの枯れ木からトゲツヤイシアブが羽化してくるところを見たことがあります。


卵は以前にエノキの樹皮下に産みこまれたものを撮影しているので、今回はそっとしておきました。

おまけの1枚。同じ日に、キアシキンシギアブを捕えていた♀です。

(2025.05.08・明石公園)


2025年5月13日火曜日

ガザミグモ♂

 脚をいっぱいに広げたガザミグモ Pistius undulatus の♂です。アベマキの葉の上に乗っていたのですが、手を近づけると葉裏に回り込んできました。異様に長い脚は第1と第2歩脚ですが、に比べて体が小さいわりにこの脚の長さはあまり変わらないようで、余計に目立ちます。アズチグモなど他のカニグモ科と同様待ち伏せ型のクモで、巣網は張りません。この長大な脚を拡げて獲物が近づくのを待っているんでしょう。第3・第4歩脚ははるかに短くて、移動にはもっぱらこの2対の脚を使います。体長は5mmほどですが、脚を拡げた差し渡しは25mmを超えています。


(2025.05.08・明石公園)


2025年5月12日月曜日

トゲナナフシの幼虫

 同じ公園に来ていた虫仲間のYさんから、トゲナナフシの幼虫を発見、との知らせをいただいたので早速駆けつけました。体長約15mm、私には初めての大きさ(というより小ささ)ですが、よく見るとなかなかかわいらしい幼虫です。この3月にお馴染みのそらさんのブログで自宅で孵化させた幼虫がアップされていましたが、それと比べると2齢くらいかもしれません。
Yさんは大のナナフシ好きで、このところずっとこのトゲナナフシの幼虫を探しておられたのですが、ほんとに見つけられたのには驚きました。なにしろこの姿かたちで薄暗い林の中の樹木の根際などでじっとしているので、はるかに大きな成虫ですら簡単に見つかるものではありません。ただし日が暮れると活動をはじめいろいろな植物の葉を食べるそうです。昨年1匹だけ自力で見つけた成虫はこちらに出しています。

写真は明るい場所の葉の上に移して撮っています。


(2025.05.03・明石公園)


2025年5月11日日曜日

イタドリの葉を巻くカシルリオトシブミ

 イタドリの葉を巻いて揺籃を作っていたカシルリオトシブミ Euops splendidus ですが、記事を書き始めて昨年も同じものを出していたのに気がつきました。ただ前回は揺籃がほぼ完成した後だったのが、今回は最後のひと巻きくらいのところからの作業を撮影できたのでもう一度出しておきます。

作業中の♀はお尻だけ見えていますが、上から覗き込んでいるのは長大な前脚から見て♂のようです。

人間を警戒したのか、やがて♂は立ち去りました。

すでに卵は産みこまれていると思われます。♀の方はここまで来て放棄するわけにもいかないのでしょう。

ひたすら仕事を続けます。

拡げた脚で引き寄せたり、

口吻を押し付けたり。


このあたりからは最後の点検で、出来上がった作品の周りを何度もぐるぐる回ります。




最後に揺籃を切り落とすのかと思っていたら、葉の方へ移動して動かなくなってしまいました。こちらが邪魔をしているせいかも知れませんが、このように葉からぶら下がったまま残された揺籃も時々見かけるので、必ず切り落とすわけでもないようです。
それにしても、小さな虫が産卵のたびにこれほど複雑で手間のかかる仕事をこなしているというのは驚きです。

(2025.05.03・明石公園)



2025年5月10日土曜日

羽化直後のブドウスカシクロバ

 朝の9時を過ぎたころでしたが、カラスノエンドウの葉につかまって翅を伸ばしつつある蛾がいました。タケノホソクロバによく似ていますが、帰宅後調べてみると同じマダラガ科のブドウスカシクロバ Illiberis tenuis のようです。ブドウの害虫とされていますが、同じ場所にはエビヅルも生えているので、それを食べて育ったものでしょう。年1化で、繭で越冬するそうです。撮りはじめて数分後、やおら翅を持ち上げて背側で合わせると、鱗粉で青く輝く腹部が現れてちょっと感動しました。







(2025.05.03・明石公園)

2025年5月9日金曜日

ムネアカアワフキの交尾と産卵

 サクラの葉を見上げながらムネアカアワフキ Hindoloides bipunctata を探していると、ちょうど交尾中のペアがいました。




図鑑やネット情報によると赤い部分が小楯板だけなのが♂で、それが前胸背まで拡がっているのが♀ということなので、画面右が♀でしょう。体のサイズも♀の方が大きいようです。ただし赤い部分については、多くの個体の中には中途半端で判別の難しいものも結構見つかります。

後ろから。

これは別の葉にいた個体で、どちらとも言い難い色合いです。♂だろうか♀だろうかと考えながらファインダーを眺めていると、体を起こした瞬間産卵管が見えました。産卵中だったと気づいたときにはすでに終わっていて、撮れたのはこのピンボケ1枚です。

移動を始めたのを2度目のチャンスを期待してしばらく追いかけていると、やがて葉柄の、花外蜜腺のあたりに腹端を付けました。角度が悪くてよく見えません。

やがて腰を上げた時に、ようやく産卵管が見えました。意外に短いです。

その後、他にも産卵中の♀がいないかと探し回って何とか撮れたのがこの1枚。やはりタイミングを逃して産卵管はすでにしまい込まれていますが、葉脈に産みこまれたばかりの卵が見えます。
サクラの枝先でよく見つかる貝殻状の物体がこのムネアカアワフキの幼虫巣だということは最近になって教えてもらったのですが、葉に産卵しているのはちょっと意外でした。孵化後しばらくは葉から吸汁するのか、あるいはすぐに枝先に移動するんでしょうか。孵化直後の幼虫を見たいものです。

(2025.05.01・明石公園)


2025年5月8日木曜日

エノキハトガリタマフシとエノキトガリタマバエ幼虫

 エノキの葉に、小さな砲弾型の虫こぶが出来ていました。タマバエ科のエノキトガリタマバエ Celticecis japonica によって作られた、エノキハトガリタマフシと呼ばれる虫こぶです。

高さは6mmくらいで葉表にも、

葉裏にも出来ています。

一つ開いてみると、まだ小さいタマバエの幼虫が1匹だけ入っていました。

体長は約1.5mmで、まだ1齢くらいでしょうか。薄葉重著「虫こぶハンドブック」によるとその生活史は「3~4月に羽化し、新葉に産卵、5~6月に虫えいごと地上に落下して、幼虫状態で越夏・越冬する。」とあります。1年の大半をこの虫こぶの中で、幼虫として過ごすわけです。

(2025.05.01・明石公園)