2020年2月2日日曜日

コアミケイソウの一種(Coscinodiscus sp.)と粘液糸

これはおそらくコアミケイソウ Coscinodiscus の一種で、近所の海岸でネットを曳くとごく普通に採れるものです。以前のブログに出したもの(こちら)もおそらく同じものだと思いますが、殻の周縁部から放射状に伸びる細くて長い刺を持っていて、これが前々からの疑問なのでした。
手持ちの図鑑類にはその存在について全く触れられていなくて、ネット上を探してもこの構造の確認できる画像が見つかりません。生きている細胞であれば実体顕微鏡でも簡単に見えるものなので不思議に思っていたのですが、今回改めて調べてみてようやく、珪藻の世界というサイトの被殻構造というページにその説明を見つけました。
それによればこの刺のようなものは中心珪藻に見られる有基突起という、殻外側に突出する中空の突起から放出される粘液糸で、プランクトン性の種類はそれによって浮遊性を高めているのだそうです(正確にはリンク先をご覧ください)。これまでひょっとしたら自分はものすごく珍しい種を見ているのかと思っていたのですが、そういう訳でもなかったようです。それにしても、このような明確な特徴を捉えた画像が見つからないのはなぜなんでしょうね。





次は同じ日に見つけたやや小型の別種ですが、やはり同様の粘液糸が見えます。



(2019.12.26・西舞子海岸にて採集)




2020年1月31日金曜日

ハナノミダマシ科の幼虫

ケヤキの幹の、五百円玉くらいの大きさの樹皮を剥がしてみると、こんな幼虫が出てきました。

体長は4mmくらいですが、お尻の先に妙なものをくっつけているように見えます。
頭部を見ると甲虫らしいので保育社の原色日本甲虫図鑑の第1巻で探してみると、よく似たものが出ていました。ハナノミダマシの一種 Scraptia sp.とあります。属はともかくとして、同じハナノミダマシ科 Scraptiidae の一種であることは間違いなさそうです。

その線でネットを検索してみると、害虫屋の雑記帳(ブログ人の保存版)で取り上げられているのが見つかりました。その記事へコメントが寄せた方がポーランドの研究者による論文を紹介されていて、そこにはこの幼虫が外的な刺激に応じてその「尾」を自切し、またその後再生もするということが書かれているそうです。



(2020.01.21・明石公園)


2020年1月30日木曜日

カシトガリキジラミに寄生するヒメコバチ科の一種(深度合成)

先日の、カシトガリキジラミ幼虫に産卵していたヒメコバチを採集して深度合成撮影をしてみました。撮影には1匹あれば良かったのですが、いつもつまらないミスをして標本を駄目にするので可哀そうですが2匹とも捕まえました。最初の2枚は体長約1.5mmの大きい方の個体、次の5枚は1.2mmの小さい方です。








ついでに、産卵されていた個体ではありませんが、寄主であるカシトガリキジラミの幼虫も。これは動かないので生体です。




(2020.01.21・明石公園にて採集)

2020年1月28日火曜日

カサボネケイソ ウ Corethron criophilum

何かのカプセルのような面白い形をした珪藻 Corethron criophilum です。「日本の海産プランクトン図鑑」では「新称」としてカサボネケイソウという和名が与えられています。



(2019.12.24・西舞子海岸にて採集)


2020年1月27日月曜日

カシトガリキジラミに産卵するヒメコバチ科の一種

アラカシの葉裏にカシトガリキジラミの幼虫が沢山ついていたので、脱皮中のものでも見つからないかと探していると、この幼虫に産卵しているヒメコバチがいました。
同様の光景は7年前の3月にも撮影していて、寄生者のヒメコバチも同じ種だろうと思っていたのですが、帰宅して確認すると腹部や脚の色が異なり、別種のようです。それにしても、暖冬とはいいながら年中で最も寒いはずの季節に産卵行動が見られるとは意外でした。

1枚の葉に数匹のキジラミ幼虫が寄生していて、その中の1匹に産卵していました。体長は約1.2mm。

産卵管を抜いてもまだ同じ寄主を探っています。

先ほどとは反対側に産卵管を差し込みます。

その後しばしの探索を経て次の犠牲者を見つけました。

同じように寄主の体の下面に産卵管を差し込みます。

キジラミ幼虫はどれも終齢のようでした。

別の葉でもう一匹、産卵中のヒメコバチを見つけました。最初のよりやや大きく体長1.5mmほどですが、同種のようです。

これは別の木のカシトガリキジラミ幼虫で、体長約2.4mm。さて無事に羽化できるでしょうか。

(2020.01.21・明石公園)


2020年1月26日日曜日

アカシオオビムシ Akashiwo sanguinea

先日のギムノディニウムと同様、鎧板を持たない渦鞭毛藻です。その名の通り赤潮を形成するということですが、瀬戸内沿岸のいつもの採集場所ではこの種が大量に発生したのをまだ見たことがありません。
やはり縦・横の鞭毛を動かして活発に泳いでいました。写真ではその鞭毛がよく写りませんでしたが、最後の動画のところどころでどうにかその動きが見られます。




(2019.12.24・西舞子海岸にて採集)



2020年1月25日土曜日

キイロカタビロコバチ Sycophila variegata (Curtis)

このあたりでは最も普通に見られるカタビロコバチです。越冬中の生体写真は何度も撮影しているので、今回は採集して深度合成撮影をしてみました。

冷凍殺虫でこんな格好になってしまいました。も少し自然な姿勢で撮影できればいいんですが、難しいです。


触角の先端に短い毛が放射状に生えていることが、今回のちょっとした発見でした。


このキイロカタビロコバチは多種のタマバチ幼虫に外部寄生することが知られているそうですが、以前に一度、10月にクロガネモチの実に産卵するのを見たことがあります。同じ木では毎年ニッポンオナガコバチ Macrodasyceras japonicum が羽化してくるのですが、両者に直接の関係があるのかどうか分かりません。

(2020.01.11・明石公園にて採集)