2025年5月11日日曜日

イタドリの葉を巻くカシルリオトシブミ

 イタドリの葉を巻いて揺籃を作っていたカシルリオトシブミ Euops splendidus ですが、記事を書き始めて昨年も同じものを出していたのに気がつきました。ただ前回は揺籃がほぼ完成した後だったのが、今回は最後のひと巻きくらいのところからの作業を撮影できたのでもう一度出しておきます。

作業中の♀はお尻だけ見えていますが、上から覗き込んでいるのは長大な前脚から見て♂のようです。

人間を警戒したのか、やがて♂は立ち去りました。

すでに卵は産みこまれていると思われます。♀の方はここまで来て放棄するわけにもいかないのでしょう。

ひたすら仕事を続けます。

拡げた脚で引き寄せたり、

口吻を押し付けたり。


このあたりからは最後の点検で、出来上がった作品の周りを何度もぐるぐる回ります。




最後に揺籃を切り落とすのかと思っていたら、葉の方へ移動して動かなくなってしまいました。こちらが邪魔をしているせいかも知れませんが、このように葉からぶら下がったまま残された揺籃も時々見かけるので、必ず切り落とすわけでもないようです。
それにしても、小さな虫が産卵のたびにこれほど複雑で手間のかかる仕事をこなしているというのは驚きです。

(2025.05.03・明石公園)



2025年5月10日土曜日

羽化直後のブドウスカシクロバ

 朝の9時を過ぎたころでしたが、カラスノエンドウの葉につかまって翅を伸ばしつつある蛾がいました。タケノホソクロバによく似ていますが、帰宅後調べてみると同じマダラガ科のブドウスカシクロバ Illiberis tenuis のようです。ブドウの害虫とされていますが、同じ場所にはエビヅルも生えているので、それを食べて育ったものでしょう。年1化で、繭で越冬するそうです。撮りはじめて数分後、やおら翅を持ち上げて背側で合わせると、鱗粉で青く輝く腹部が現れてちょっと感動しました。







(2025.05.03・明石公園)

2025年5月9日金曜日

ムネアカアワフキの交尾と産卵

 サクラの葉を見上げながらムネアカアワフキ Hindoloides bipunctata を探していると、ちょうど交尾中のペアがいました。




図鑑やネット情報によると赤い部分が小楯板だけなのが♂で、それが前胸背まで拡がっているのが♀ということなので、画面右が♀でしょう。体のサイズも♀の方が大きいようです。ただし赤い部分については、多くの個体の中には中途半端で判別の難しいものも結構見つかります。

後ろから。

これは別の葉にいた個体で、どちらとも言い難い色合いです。♂だろうか♀だろうかと考えながらファインダーを眺めていると、体を起こした瞬間産卵管が見えました。産卵中だったと気づいたときにはすでに終わっていて、撮れたのはこのピンボケ1枚です。

移動を始めたのを2度目のチャンスを期待してしばらく追いかけていると、やがて葉柄の、花外蜜腺のあたりに腹端を付けました。角度が悪くてよく見えません。

やがて腰を上げた時に、ようやく産卵管が見えました。意外に短いです。

その後、他にも産卵中の♀がいないかと探し回って何とか撮れたのがこの1枚。やはりタイミングを逃して産卵管はすでにしまい込まれていますが、葉脈に産みこまれたばかりの卵が見えます。
サクラの枝先でよく見つかる貝殻状の物体がこのムネアカアワフキの幼虫巣だということは最近になって教えてもらったのですが、葉に産卵しているのはちょっと意外でした。孵化後しばらくは葉から吸汁するのか、あるいはすぐに枝先に移動するんでしょうか。孵化直後の幼虫を見たいものです。

(2025.05.01・明石公園)


2025年5月8日木曜日

エノキハトガリタマフシとエノキトガリタマバエ幼虫

 エノキの葉に、小さな砲弾型の虫こぶが出来ていました。タマバエ科のエノキトガリタマバエ Celticecis japonica によって作られた、エノキハトガリタマフシと呼ばれる虫こぶです。

高さは6mmくらいで葉表にも、

葉裏にも出来ています。

一つ開いてみると、まだ小さいタマバエの幼虫が1匹だけ入っていました。

体長は約1.5mmで、まだ1齢くらいでしょうか。薄葉重著「虫こぶハンドブック」によるとその生活史は「3~4月に羽化し、新葉に産卵、5~6月に虫えいごと地上に落下して、幼虫状態で越夏・越冬する。」とあります。1年の大半をこの虫こぶの中で、幼虫として過ごすわけです。

(2025.05.01・明石公園)


2025年5月7日水曜日

フタナミトビヒメシャク

 トウネズミモチの葉の上にとまっていた蛾で、フタナミトビヒメシャク Pylargosceles steganioides だと思います。ネット情報によると春型(1化)と夏型(2化)で見かけがかなり異なり、夏型では斑紋が不鮮明になるそうですが、これはもちろん春型ですね。また♂では触角が櫛歯状になるらしいのですが、下の写真ではよく見えません。幼虫はいろいろな植物を食べるようで、ネット上でも多数の画像が見られますが、顔面の模様に特徴があるようです。見たことがあるような、無いような。芋虫毛虫の写真も撮ってはいるのですが、ほとんどは名前も調べず放置しているので、探せばその中にあるかもしれません。前翅長約12mmです。



(2025.04.30・明石公園)


2025年5月6日火曜日

アベマキ幹に集まるクヌギハバチの幼虫たち

 何気なく眺めていたアベマキの幹で、ハバチの幼虫が丸まっているのに目がとまりました。ひょっとして蛹化の準備だろうかと思いながら周りを見ると、幹や太い枝で多数の同じ幼虫がくっついていて、どれも同じように丸くなったまま動きません。このアベマキの木では毎年のようにこのハバチ幼虫が葉についているのを見ていましたが、こんなふうに多数が幹や枝に集まっているのを見たのはこれが初めてです。おそらく毎年同じ光景が繰り返されていたのに気づかなかっただけでしょう。
この幼虫については何年も前に一度調べてみたものの正体が分からず、そのまま放置していたのですが、今回もう一度ネット情報を探してみました。アベマキにつくのだからクヌギにもつくだろうと、試しに“クヌギハバチ”で検索するとこちらのリストにその和名が見つかり、さらにその学名 Apethymus kunugi Togashi, 2005 で再検索するとこちらの論文が出てきました。その中で本種についての解説や載せられている幼虫の写真を見るとどうやら当たりのようです。生活史の説明には宿主として新たにコナラが記録され、他のコナラ属の種もこのハバチの宿主となる可能性がある、とされているので、アベマキもその一つになるのでしょう。また飼育下では成熟幼虫は土中に潜ったということなので、アベマキの幹に集まっていた幼虫もやがて幹から下りてきて土中で蛹化するのだろうと思います。成虫は秋に羽化してくるそうなので、気を付けていれば見られるかと期待しています。





まだ葉に残っている幼虫もかなりいました。

いつ見てもこの格好でじっとしていますが、食事は夜間にするのでしょうか。

(2025.04.30・明石公園)


2025年5月5日月曜日

オドリバエ科 Rhamphomyia SP.

 先日のクロアシボソケバエにちょっと似ていますが、こちらはケバエではなくオドリバエの仲間です。アカメガシワの、その名の通り赤い毛におおわれた新葉の上に乗っていました。幸い翅脈もはっきり写っているので、いつも参考にしている三枝豊平さんの“日本産双翅目の図解検索システム Ⅰ オドリバエ科”の検索表を辿ってみると、いくつか写真では確認できない部分も残るものの、Rhamphomyia(ホソオドリバエ属)の特徴によく一致します。MNDの翅脈図を見てもよく合っているのでこの学名でネット検索すると、昔の自分の記事が出てきました。今回と同様♂個体で非常によく似ていますが、翅の色が少し違うように見えるので別種かもしれません。それにしても、撮った写真もその後の身元調査も13年前と全く同じことをやっているのに我ながら笑ってしまいます。こちらの記事の♀も同属だと思います。




(2025.04.30・明石公園)