2020年4月18日土曜日
2020年4月17日金曜日
トサカグンバイの孵化
食害されて斑になったアセビの葉を裏返してみると、生まれたばかりのグンバイムシの幼虫が群れていました。
このあたりに多いナシグンバイやヒメグンバイも幼虫は似たような格好ですが、植樹から判断してトサカグンバイ Stephanitis takeyai で間違いないでしょう。卵で冬を越していたようです。
体長は0.5~0.6mmくらいです。孵化直後らしい、体色がまだ出ていないものもたくさんいます。
葉肉に産みこまれた卵から孵化幼虫が出た後には「蓋」が残されています。この様子では孵化の最中のものもいるかも知れないとルーペで探してみると、いました。
グンバイムシの孵化の瞬間を見るのはこれが初めてです。出てきたばかりで、まだ蓋を頭に載せています。
蓋は卵殻につながっているので、引っ張られてずり落ちました。
口吻がずいぶん幅広く見えます。
もう少し。
全身が抜け出る瞬間はタイミングが合わず撮りそこねました。
この後さらに2匹、孵化してくるのを見つけ、都合2時間近くもしゃがみこんで撮影を続けることになったので、終わった時には立ち上がるのにも苦労するほど全身がこわばってしまいました。
この後さらに2匹、孵化してくるのを見つけ、都合2時間近くもしゃがみこんで撮影を続けることになったので、終わった時には立ち上がるのにも苦労するほど全身がこわばってしまいました。
トサカグンバイはアセビの他にネジキにもつき、この場所でもよく見られます。この木は落葉樹なので、ナシグンバイやヒメグンバイなどと同様この種も成虫で冬を越すものと思っていました。アセビの葉で卵越冬していたということは、ネジキで育った雌も秋の最後の世代はアセビを探して産卵するんでしょうか。
(2020.04.03・学が丘北公園)
2020年4月16日木曜日
リクモフォラ (Licmophora sp.)とパルリべルス(Parlibellus sp.)
近所の海岸で採集した、どちらも付着性の珪藻で、リクモフォラ属(オウギケイソウ)の一種 Licmophora とパルリべルス Parlibellus 属の一種です。
ゴミだらけで汚い画像ですが、画面右側で帯状にひしめき合っているのがパルリベルス、枝分かれした透明の柄の先の三角形がリクモフォラです。
パルリベルスは粘液質のチューブを作り、その中で分裂を繰り返して増えるそうです。
細胞内に2個づつ見える球体は油滴でしょうか。
リクモフォラは以前のブログに出したものと同種かも知れません。ソーセージ型の葉緑体がたくさん見えます。
細胞表面近くにピントを合わせたところ。
(2020.03.22・西舞子海岸にて採集)
2020年4月15日水曜日
キスイモドキ属の一種(Byturus sp.)
クサイチゴの花がたくさん咲いていたので見に行くと、やはりこの虫が来ていました。例年この時期この花の上で見かけるお馴染みの甲虫で、これまでキスイモドキ Byturus affinis だと考えていたものですが、あらためて調べてみると同属のズグロキスイモドキ B. atricollis の可能性もありそうです。両種の判別点の一つは前胸背板後角が前者では角ばり、後者では円いという点なのですが、下の写真ではどちらかと言えば円いという表現が合いそうに見えます。ただ角ばるとか円いとか言っても実際にどの程度の違いがあるのか、ネット上を探してもその点をはっきり確認できる画像が見つからないので、今回は Byturus sp. としておきます。
クサイチゴの花の上で交尾中。♀はせっせと花粉を食べています。
長い毛に覆われていますが、前胸背板後角は円いように見えます。
(2020.04.03・学が丘北公園)
2020年4月14日火曜日
パラディレプタス属の一種
これはよく見かける大型の繊毛虫で、以前トラケリウス属と思っていたものですが、よく調べるとパラディレプタス属だったようです。
象の鼻のような吻部を持ち、くるくる回転しながら活発に泳ぎます。まずその動画から。
象の鼻のような吻部を持ち、くるくる回転しながら活発に泳ぎます。まずその動画から。
次は細部を見るためにある程度カバーガラスで押さえつけて撮っています。
細胞の後端近くに数珠状に並んでいるのは大核だと思います。油滴のように見える球はやはり脂肪でしょうか。
細胞の表層近くに多数の収縮胞が並んでいます。
カバーガラスに押えられた繊毛が写っています。
これで細胞の表面にピントが合っている状態だと思いますが、この粒々は何でしょうか。
さらに内部にピントをずらすと大核が見えてきます。
動画です。
(2020.03.14・明石公園 桜堀にて採集)
2020年4月13日月曜日
ネスイムシ科の一種
朽木の樹皮下からホソカタムシやチビヒラタムシの仲間と一緒に出てきた小甲虫です。
全身が細かい木屑にまみれていて細部が確認できませんが、上翅が短く末端が裁断状で尾節板が露出していることや、触角の形などからネスイムシ科 Monotomidae の一種と思われます。下の写真では3個体が混ざっていますが、いずれも体長が約2.5mmで、同じ種だと思います。ネスイムシ科の仲間では同じ場所で以前にアナバケデオネスイ Mimemodes cribratus を見つけています。
全身が細かい木屑にまみれていて細部が確認できませんが、上翅が短く末端が裁断状で尾節板が露出していることや、触角の形などからネスイムシ科 Monotomidae の一種と思われます。下の写真では3個体が混ざっていますが、いずれも体長が約2.5mmで、同じ種だと思います。ネスイムシ科の仲間では同じ場所で以前にアナバケデオネスイ Mimemodes cribratus を見つけています。
(2020.04.03・学が丘北公園)
2020年4月12日日曜日
顕微鏡写真に RawTherapee のフラットフィールド機能を
RAWファイルの現像には以前はアドビのCamera Rawを使っていたのですが、現在自分で使っているカメラにはすでにほとんど対応しなくなっていて、かと言って最新バージョンを使うためにCCを購入する気にもならないので数年前からは主にフリーソフトのRawTherapeeのお世話になっています。
これは基本的な色調やコントラスト、シャープネスなどに関して恐ろしく多機能なソフトで、実のところ未だよく理解も出来ず使ってもいない部分も多いのですが、その中にフラットフィールドという機能があります。これが顕微鏡撮影には非常に有用なのですが、せっかく無料で用意されているのにあまり知られていないようなので(新型ウィルス騒動のおかげで時間もあるので)、ここで紹介しておきたいと思います。
これは光学系や照明など被写体以外に起因して画像に現れる明るさや色のムラを取り除くために使われるもので、顕微鏡撮影の場合は照明ムラやコンデンサー・リレーレンズ、センサーのゴミなどの影響を打ち消すのに有効です。ただこの機能が使えるのはRAWファイルに限定されますが、色調やコントラストなど他の調整を施した後でも適用できます。
使い方は簡単です。まず補正したい画像を撮影した後、プレパラートを動かして何もない空白の部分を探します。と言っても完全にゴミもチリもないという状態はまず望めないので、ごく小さなものなら我慢します。そしてそのごく小さなゴミが見えなくなる程度に少しピントを外しますが、外す量が大きすぎると照度分布が変わるのでよくありません。その状態で撮影したものを補正用の画像として使用するのですが、その間コンデンサーの位置や絞り、カメラの角度など一切動かしてはいけません。露出も変わらないように、マニュアル設定の方が良いでしょう。
後は補正したい画像をRawTherapeeで開き、フラットフィールド機能を選んで、補正用の画像を適用するだけです。以下は作例です。
これが補正前の画像です。オリンパスBHCに短鏡胴のプランアクロマート40/0.65で偏斜照明、ニコンのHKW10Xにマイクロニッコール55mm F3.5をつけたD7000でのコリメート撮影です。盛大に出ている大小の影はコンデンサーやリレーレンズ、撮影レンズなどのゴミや傷によるものでしょう。被写体はMWSさんの珪藻プレパラートです。
これは基本的な色調やコントラスト、シャープネスなどに関して恐ろしく多機能なソフトで、実のところ未だよく理解も出来ず使ってもいない部分も多いのですが、その中にフラットフィールドという機能があります。これが顕微鏡撮影には非常に有用なのですが、せっかく無料で用意されているのにあまり知られていないようなので(新型ウィルス騒動のおかげで時間もあるので)、ここで紹介しておきたいと思います。
これは光学系や照明など被写体以外に起因して画像に現れる明るさや色のムラを取り除くために使われるもので、顕微鏡撮影の場合は照明ムラやコンデンサー・リレーレンズ、センサーのゴミなどの影響を打ち消すのに有効です。ただこの機能が使えるのはRAWファイルに限定されますが、色調やコントラストなど他の調整を施した後でも適用できます。
使い方は簡単です。まず補正したい画像を撮影した後、プレパラートを動かして何もない空白の部分を探します。と言っても完全にゴミもチリもないという状態はまず望めないので、ごく小さなものなら我慢します。そしてそのごく小さなゴミが見えなくなる程度に少しピントを外しますが、外す量が大きすぎると照度分布が変わるのでよくありません。その状態で撮影したものを補正用の画像として使用するのですが、その間コンデンサーの位置や絞り、カメラの角度など一切動かしてはいけません。露出も変わらないように、マニュアル設定の方が良いでしょう。
後は補正したい画像をRawTherapeeで開き、フラットフィールド機能を選んで、補正用の画像を適用するだけです。以下は作例です。
これが補正前の画像です。オリンパスBHCに短鏡胴のプランアクロマート40/0.65で偏斜照明、ニコンのHKW10Xにマイクロニッコール55mm F3.5をつけたD7000でのコリメート撮影です。盛大に出ている大小の影はコンデンサーやリレーレンズ、撮影レンズなどのゴミや傷によるものでしょう。被写体はMWSさんの珪藻プレパラートです。
同じ条件でもう1枚。
そしてこれが補正用画像。
補正後の画像です。偏斜による照明ムラや、ゴミ・チリの影が見事に消えています。
もう1枚も。
次はコンデンサを目一杯絞った画像です。通常ここまで極端に絞ることはありませんが、コリメート撮影でよく出る同心円状のムラや青っぽいハレーションが見えます。
上の補正用画像。
補正してかなりすっきりしました。まだ残っている黒い斑点はカバーガラスやスライドガラスに付着したゴミで、これはこの機能では取れません。
最後に少し補足説明を。フラットフィールド補正の調整項目にある「ぼかし半径は」デフォルトでは32となっていますが、この設定では小さな影は取り切れないので、0かそれに近い数値にした方がよいでしょう。この数値を小さくすると補正用画像のノイズを拾う可能性が高くなるそうですが、実際に試してみるとISO100や200の常用感度ではまず影響はないようです。被写体によって高ISOで撮影する必要がある場合も補正用画像の方はISO値を低くして撮影しておけば問題ないでしょう。
以上のように大変重宝な機能なのですが、実は私自身はそれほど使っていません。動き回る動物プランクトンを元気なうちにと倍率や絞りを変えながらどんどん撮影していく場合が多いので、補正用画像の撮影が追い付かないからです。撮影後、照明ムラやゴミの目立つ画像を見ながら後悔することも多いのですが。他には、昔のネガやポジの複写をする際の照明ムラの補正に使っています。
RawTherapeeは他にも面白い機能が多く、例えば「詳細レベルによるコントラスト調整」では特定の周波数域のコントラスト調整が出来て珪藻の条線の表現などに役立ちそうだし、長時間露光によるノイズをキャンセルするダークフレーム補正などは普通天体画像用ソフトにしか備わっていないものです。
RawTherapeeのダウンロードはこちら。頻繁にアップデートを繰り返して最新型のカメラにも次々と対応してくれています。またこのソフトのマニュアルであるRawPedia(日本語)はこちら。かなり専門的な解説が多く私のような素人にはかなり難物ですが、読んでいると勉強になることが多々あります。
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