2021年11月5日金曜日

クスベニヒラタカスミカメと産卵痕

特徴的な食痕のあるクスノキの葉を裏返していくと、10月末になってもまだクスベニヒラタカスミカメ Mansoniella cinnamomi の幼虫がいました。


この種は卵越冬だそうなので、すでに産卵を済ませて姿を消している頃ではないかと思っていました。見つかった幼虫はすべて終齢でしたが、これから羽化・交尾・産卵と、寒くなるまでに間に合うんでしょうか。

成虫もちらほら。

葉柄に産卵すると聞いたので、それらしい跡を探してみると、ありました。


しかし拡大してみると、すでに「蓋」が開いているような…。

持ち帰った葉柄を割いてみると、案の定出てきたのは孵化した後の殻の卵殻のようです。越冬卵を見たかったのですが、もっと新鮮な葉を探さなくてはいけないのかも知れません。

(2021.10.27・明石公園)

2021年11月4日木曜日

キリの葉の上のヒメイトカメムシ

 大きな葉をつけたキリの幼木を見に行くと、予想通りヒメイトカメムシ Metacanthus pulchellus がたくさん集まっていました。成虫・幼虫ともにほとんどは裏側にいるのですが、少数は葉の上にも出ていて、粘着性の毛に捕えられて死んだり動けなくなったりした小昆虫に口吻を刺しているものが高い割合で見られます。モチツツジカスミカメと似た習性で、粘毛の上を不自由なく歩き回れるのは不思議ですが、大変臆病でカメラを近づけると立ち去ってしまうことが多く、たくさん見かけるわりに満足には撮れませんでした。

幼虫は脚や触角のだんだら模様が特徴的です。獲物は原形をとどめていませんが、小さなハエかユスリカでしょうか。

別の葉の上で食事中の幼虫ですが、齢は同じ(終齢?)ようです。

獲物はノミバエの一種でした。

同じように食事をしている成虫も数匹見かけましたが、どうにか撮れたのはこの1枚だけ。ちょっと前ピンでした。

(2021.10.27・明石公園)

2021年11月3日水曜日

ハラビロクロバチ科の一種

 木の葉の裏で見つけた小さなハチですが、足早に走り回ってどうにも撮影できないので捕えて帰りSTACK撮影しました。ハラビロクロバチ科(Platygastridae)の一種だと思いますが、属は分かりません。以前に撮影した Trimorus sp. と同様第1腹節の背面に瘤のような突起があります。♀のようで、体長は1.6mmくらいです。

翅はボロボロでしたが、黒っぽい斑紋があります。

背面の瘤は Inostemma が背中に背負った管の原形のようなものでしょうか。


(2021.10.27・明石公園にて採集)

2021年11月2日火曜日

ハネオレバエ科の一種(Psila sp.)

数年ぶりに見たトラ柄のハネオレバエです。クスノキの葉裏にいました。 
過去に撮影したのはいずれも11月で、他のサイトで見られる画像もほぼその頃に撮られているので、出現時期は晩秋に限られているようです。以前のブログに掲載した時点では Psila 属の未記載種だったらしいのですが、その後名前が付いたのかどうかは聞いていません。過去の経験では刺激に鈍感なハエという印象があったのですが、今回も葉を裏返しても逃げずに撮影させてくれました。体長約4.8mmです。



♀のようですが、腹部下面の出っ張りは何でしょうか。



(2021.10.27・明石公園)

2021年11月1日月曜日

ウスモンミドリカスミカメ

 花の終わったチチコグサの花序にいたウスモンミドリカスミカメ Taylorilygus apicalis です。



以前のブログに掲載した成虫と比べると体色がかなり違いますが、「日本原色カメムシ図鑑 第2巻」によると本種は分布が広い上に著しい色彩変異をもつことから、過去には多くの種名で記載されてきたという経緯があるそうです。翅端まで約5mmです。

同じ成虫です。

幼虫もいました。

体長約3.6mmで、多分終齢でしょう。

(2021.10.27・明石公園)

2021年10月30日土曜日

クワの葉で産卵していたクモガタテントウとラブルベニア

背丈くらいに伸びたクワの幼木の葉をめくってみると、クモガタテントウ Psyllobora vigintimaculata が産卵中でした。


既に3個の卵を産み付けています。

次の卵が出てくるのを息をひそめて待っていましたが・・・。

残念ながら産卵を中止して立ち去ってしまいました。

お尻には以前にも同じクモガタテントウで見たラブルベニア(Laboulbenia)菌がくっついています。寄生性の菌類で、昆虫など小型の節足動物が寄主となるようですが私はまだこのクモガタテントウでしか見ていません。

(2021.10.27・明石公園)

ナナミノキのニッポンオナガコバチ

毎年いつもの公園のクロガネモチで観察しているニッポンオナガコバチ Macrodasyceras japonicum ですが、今回初めて同じ公園内のナナミノキの実に♂が集まっているのを見つけました。実はまだ黄色いのですが、すでにハチが出たらしい穴の開いているものもあって、この♂たちは一足先に羽化して♀の誕生を待っているようです。
このハチの宿主植物としては北隆館の大図鑑にもナナミノキとウメモドキが挙げられていて、この公園内にも数本のナナミノキがあるのですが、どれも低い位置の枝がほとんどなく、これまでよく見る機会がありませんでした。今回も頭より高い位置の枝を引っ張り下ろして撮影しています。
ナナミノキでのニッポンオナガコバチについてはそよかぜさんが詳しく観察されています。その中で、クロガネモチの実から羽化してきた個体よりもナナミノキから出てきたものの方が明らかに大型で、また♂の背面の色が明るいということに注意されています。確かにこの日見た♂は大きな個体が多く、また撮影できた2個体はどちらも胸部背面が明るい色をしているようです。
これまでに見てきた限りではこのハチの♀がクロガネモチの実から羽化してくるのは11月中旬から12月上旬くらいで、そよかぜさんの観察も考え合わせるとナナミノキではそれより半月から1か月ばかり早いようです。どちらの場合でも羽化した♀はそのまま冬を越した後に産卵するものと考えられますが、9月はじめにクロガネモチに産卵に集まる♀個体は明らかに小型で、また時期も離れすぎているので、越冬する♀とは世代が違うものと思っています。それでは越冬♀はいつどこで産卵するのでしょうか。他の宿主として知られているウメモドキやソヨゴとも考えられますが、ハンマーさんが11月上旬にウメモドキで、またBABAさんは11月中旬にソヨゴで♀の羽化を観察されていて(いずれも兵庫県内)、時期はクロガネモチやナナミノキと大差ありません。つまりそれらの実に産卵したのはやはり越冬明けの♀ではなく、その次の世代でしょう。越冬♀はおそらく春から初夏にかけて未知の宿主植物に産卵し、次世代は夏頃に羽化してくるのではないかと想像しています。

♂は沢山いたのですが枝の位置が高く、撮影できたのは2匹だけでした。この♂は翅端まで約5.2mm。


これは別の♂で翅端まで約4.3mm。♀の羽化が間近なようです。

♀は実の内部から、果実の表皮1枚残すところまで掘り進んできているようです。脱出のチャンスを窺っているところでしょう。


間もなく♀が顔を出すだろうと思いしばらく見ていましたが、手で枝を持っているせいで警戒しているのかそれ以上の動きが無く、あきらめて引き揚げました。

ニッポンオナガコバチに関する過去の主な投稿はこちらの記事の末尾にリンクをまとめています。

(2021.10.21・明石公園)