2023年9月13日水曜日

イタチムシの一種(Polymerurus ?nodicaudus)

 イタチムシの仲間(腹毛類)は池の水などを採ってきて顕微鏡で覗いていると割合普通に見つかる動物ですが、伝統的(?)にプランクトンとしては扱われていないようで、手持ちの何冊かの「プランクトン図鑑」ではほとんど取り上げられていません。唯一の例外は最近出た「プランクトンハンドブック・淡水編」で、「底生性で、意外とふつうに見られる」とあります。厳密な定義に従うと底生性ならばプランクトンではなくベントスだということになるんでしょうが、それを言えばほとんどのアメーバ類をはじめ、なじみ深い多くの生物がプランクトン図鑑から消えることになるでしょう。専門家向けのものはともかく、一般向けの「プランクトン図鑑」にはぜひこのイタチムシにもページを割いてほしいものです。
今回のイタチムシですが、たまに見かける大型の種で、ずばりイタチムシという和名の与えられた Polymerurus nodicaudus という種ではないかと思います。いつもはこちらのような小型種ばかり見ているので、こんな立派な奴に出会うとうれしくなります。



頭部(左下)に見える円いものが口です。


横向きになったところ。画面左を向いた腹側に繊毛が密生していて、この運動によって泳ぎます。腹毛類の名の由来です。

(2023.07.19・明石公園の池にて採集)


2023年9月11日月曜日

ヒメトビケラの一種(?Hydroptila sp.)の幼虫

 プランクトン観察のために水田で採ってきた水の中に、こんなものを見つけました。筒形の巣に入った小さなトビケラの幼虫で、ネット上の情報を参照するとヒメトビケラ科で間違いなさそうです。同科の中でもヒメトビケラ属 Hydroptila の可能性が高いと思っていますが、こちらの方は確かとは言えません。この仲間の成虫は以前に一度だけ撮影しています(こちら)。
巣は小さな砂粒などを綴って作られています。両端が開いていて、時々長い体を反転させて反対側から顔を出すところは、類縁は遠いのですが以前のブログに出したフサゴカイの幼生を思い出しました。




巣に絡まったアオミドロを食べていました。

動画です。
終盤では巣の表面に棲みついた(?)繊毛虫やイタチムシが見えます。


(2023.08.11・神戸市西区にて採集)

2023年9月9日土曜日

ボクトウガの幼虫

 大量の樹液を流してハナムグリやスズメバチを集めているアベマキの樹皮の割れ目から、ボクトウガ Cossus jezoensis の幼虫が顔を出していました。

いかにも肉食らしい顔つきです。

顔を出していたのも束の間、せっせと大あごを働かせて樹液でペースト状になった木屑を周りに積み上げ、すぐに見えなくなってしまいました。

これは別の日、やはり樹液を流すコナラの幹で、キョウトアオハナムグリの足元を上ってくるのを見つけました。


よりよい場所を求めて引越しでしょうか。

樹皮の隙間にもぐり込んでいきます。

間もなく完全に姿を隠してしまいそうです。

(1~2枚目/2023.08.22、3~6枚目/08.27・明石公園)


2023年9月8日金曜日

クヌギシギゾウムシ

 アベマキのドングリにシギゾウムシのなかまがきていました。何度も場所を変えながら口吻を突き刺しています。殻斗に顔を埋めるように深く穿孔しているので、やがて産卵に移るのだろうと思って見守っていたのですが、ドングリの状態が気に入らないのか、それよりもこちらが邪魔をしたせいか、産卵を始めることなくやがて立ち去ってしまいました。いつものように保育社の甲虫図鑑を調べてみると、クヌギシギゾウムシ Curculio robustus のようです。クヌギとアベマキに実に産卵、とありました。





保育社の甲虫図鑑の検索表では、本種は「触角第2中間節は第1中間節より長い」。


(2023.09.01・明石公園)

2023年9月5日火曜日

シマケンモン

 ムクノキの幹にとまっていたシマケンモン Craniophora fasciata です。ただじっとしていただけで特に説明することもありませんが、幼虫はネズミモチやヒイラギなどのモクセイ科の樹木につくそうで、以前のブログにトウネズミモチにいたものを出していました。



左前翅の眼状紋のあたりです。

(2023.09.01・明石公園)

2023年9月4日月曜日

ミスジミバエ

 頭上に広がったクサギの葉の裏を見上げていると、歩き回るハエの影が見えました。歩き方や翅の動かし方でミバエの仲間と分かります。この場所でこの大きさのミバエといえばミスジミバエ Zeugodacus scutellatus しかありませんが、そっと枝を引き下ろしてみるとはたしてその通りでした。オスのようです
手元の図鑑を見ると北隆館・保育社ともに、幼虫はカラスウリの雄花の花筒内で育つ、とあります。すぐ近くにカラスウリの群落があったので、そこで発生しているのかも知れません。成虫越冬で、以前にはヤツデの枯葉の中で集団越冬しているのを見たことがあります。





きれいな複眼を正面から撮りたかったのですが、逃げられました。

(2023.08.27・明石公園)

2023年8月31日木曜日

ヨシブエナガキクイムシ(タイトル修正)

* 2023.09.29・タイトル修正 *

タイトルが「ヨシブエナガクチキムシ」になっていると、Aclerisさんからご指摘をいただきましたので、「ヨシブエナガキクイムシ」に修正しました。

前回の記事のヒメクチキムシダマシと同じアベマキの幹を歩いていたナガキクイムシの仲間です。ほとんど止まらないので背面の写真しか撮れませんでした。最近よく見かけるカシノナガキクイムシより細長い体型で、調べてみると以前にも出したヨシブエナガキクイムシ Platypus calamus のようです。前回は上翅先端の突起が目立つ♂でしたが、今回のは♀でしょう。体長は約3.7mmです。




3枚目から一部を拡大しました。前胸背板の後ろ寄りに細かな点刻が集まっていますが、これは胞子貯蔵器官です。この穴の中に菌類の胞子を入れて運び、穿孔した樹木の中で繁殖させ、それを食料とするそうです。ナガキクイムシ科に共通する特徴ですが、この穴の大きさや配列は種によって異なるそうで、以前撮影したカシノナガキクイムシにはもっと大きな穴が並んでいました。

(2023.08.22・明石公園)