2025年5月22日木曜日

ヒメコブハムシの交尾と産卵

 去年初めて見たヒメコブハムシ Chlamisus diminutus が今年も同じ場所のイタドリに来ていました。実は 昨日の記事のオオズアリもこのハムシを探しているときに見かけたものです。前回は見つけられなかった交尾シーンもようやく撮ることができ、また産卵中の♀もいました。この場所のイタドリは、夏が終わる頃には他の雑草とともにきれいに刈り払われていたので今年も来るかどうか心配していましたが、無事に帰ってきたようです。同属のムシクソハムシは成虫で越冬するそうですが、この種も同じなんでしょう。ただ最近まで食草も不明だったようですから、まだ確認されていないのかも知れません。

交尾スタイルは同属のムシクソハムシとほとんど同じですが、♂は脚も触角もすべてたたんで、♀と繋がった交尾器だけで支えられています。




♀が歩きはじめると♂もくっついたままついていきます。

1匹のメスが卵に糞の上塗りをしている最中だったのですが、撮ろうとすると離れてしまいました。こちらを警戒して中断してしまったのかも知れませんが、仕事はほぼ終わっているようです。茎の表面が広く齧られているのが見えますが、去年の観察でも成虫幼虫ともに葉よりも茎の表皮を食料としているように見えました。

糞ケースの色は、メスが食べた茎の赤い表皮の色そのままです。
孵化後、幼虫はこの糞ケースの一端から顔を出して摂食をはじめ、こちらのように成長につれて自分の糞を付け足してケースを大きくしていきます。

(2025.05.13・明石公園)


2025年5月21日水曜日

イタドリの花外蜜腺とオオズアリ

 イタドリの茎の、葉柄の付け根のすぐ下のあたりにアリがしきりに口をつけているのでルーペで覗くと、こんな場所に花外蜜腺があるようです。お恥ずかしいことに、イタドリの茎に花外蜜腺があることは初めて知りました。アリは、アカメガシワの花外蜜腺にもよく来ているオオズアリ Pheidole nodus のワーカーです。周囲を見ると、あちこちの蜜腺に1匹づつ来ていました。滑らかな卵型の頭部と長い脚を持った美しいアリですが、何匹もいた個体はどれもいつも見ているものよりだいぶ体色が薄く、内臓や気管が透けて見えます。気になるので念のため図鑑やネット情報を改めて調べてみましたが、別種という可能性はなさそうです。











(2025.05.13・明石公園)

2025年5月20日火曜日

アラカシの葉巻の中のムラサキシジミ幼虫

 先のマガリケムシヒキの産卵を見たのと同じ日に、やはり同じFさんがアラカシの新葉が細長く巻かれているのに気づいて拡げてみると、中にはムラサキシジミ Narathura japonica の幼虫が潜んでいました。葉巻の中に身を隠したまま食事をしているようです。周囲には同じような葉巻がいくつもぶら下がっていて、さらに何匹かの幼虫が見つかり、その分泌物を求めてアリも来ていました。また巻かれて垂れ下がった葉は、葉柄近くの主脈に嚙み切られたような傷があります。ある種のオトシブミ類と同様に、葉を萎びさせて柔らかくするためでしょう。だいぶ食べられてすでに空き家になった葉巻もありました。おそらくこの公園の中でも毎年どこかで見られる光景なのでしょうが、教えてもらわなければいつまでも気づかずに終わったかも知れません。日ごろ虫が少なくなったと嘆いていても、注意してさえいればまだまだ新たな発見があるようです。

巻かれたというより、葉が萎びて自然に丸まったようにも見えます。

葉巻の中にいた幼虫。

アリも来ていました。これはシリアゲアリ類のようです。

主脈を噛み切った後がよく見えます。中の幼虫の影も。

この葉巻はすでに用済みのようで、空き家になっています。

(2025.05.08・明石公園)


2025年5月19日月曜日

キバラルリクビボソハムシ 卵・孵化幼虫・成虫

 食痕が目立つツユクサがあったので、以前から撮影したいと思っていたキバラルリクビボソハムシ Lema concinnipennis の幼虫を期待して適当に葉を裏がえしていくと、何枚かの葉裏にハムシのものらしき黄色い卵が産み付けられていました。周りを探すと成虫も数匹見つかったので、卵もこのハムシのもので間違いなさそうです。まだ幼虫の姿はありませんが、一端に眼点のような斑点の現れているものもあって、孵化が近いと思われました。
数日後に訪れると、いくつかの卵塊は孵化していて小さな幼虫が摂食を始めています。まだ生まれたばかりと思われますが、すでに少量ながら自分の糞を背中に乗せているものもいました。また孵化直前と思われる卵では、卵殻を通して孵化直前の幼虫の姿がはっきり見えています。周囲ではまだ何組かの成虫が交尾していたので、産卵はまだしばらく続くのでしょう。まだ実物を見たことがありませんが、幼虫の成長につれて背中の荷物も大きくなっていくようです。少し日を置いてまた見に来なければなりません。

卵は数個から十数個をかためて産み付けられていました。1個の長さは約1mm。

こちらの卵では一端に赤い点がいくつか見えて、やや進んだ発生段階だと思いますが、なぜかどれも少し凹んでいます。

5日後。いくつかの卵塊はすでに孵化していました。

孵化幼虫の体長は約1.2~1.5mm。

葉の表側の表皮を残して食べています。

孵化間近の卵。

大あごの形が見えます。

交尾中の雌雄。和名の由来の、黄色い腹部が見えます。

両方の顔面にピントを合わせたいのですが、なかなかうまく行きません。

別のペアです。

(2025.05.08/13・明石公園)


2025年5月18日日曜日

オオヒメグモに捕らえられたウロコアシナガグモ

 初夏のこの時期、広葉樹の葉の裏で、こちらのようにウロコアシナガグモの母グモが卵嚢や孵化したばかりの子グモのそばに留まっているのはよく見る光景ですが、その間はやはり捕食者に狙われやすくなるんでしょうか。この♀はアラカシの葉裏でオオヒメグモに捕まっていました。卵はまだ孵化していないように見えますが、卵嚢から出た幼虫も母グモがそばにいないと生存率に違いが出てくるかもしれません。




(2025.05.08・明石公園)

2025年5月17日土曜日

ホシミスジの若齢幼虫

 これも虫仲間のNさんに居場所を教えてもらった、ホシミスジ Neptis pryeri の幼虫です。長年この公園に通っていて、成虫なら何度か撮っていますが、幼虫についてはユキヤナギにつくというくらいの知識しかなく、実物を見たこともありませんでした。
その幼虫がいたのはユキヤナギではなく同属のコデマリでしたが、計3匹が別々の枝の先端近くで、それぞれぶら下がった小さな枯葉にくっついていました。体長は10mm前後で、まだ若齢と思われます。色と言い形と言いほとんど枯葉と一体化していて、目の前で指差してもらってもすぐには分かりませんでした。予備知識を持ってその気で探さないとまず見つけることは出来ない気がします。

こうして見るとまるでミノムシです。

反対側から。体長約8mmです。

これはやや大きな別個体。

顔面を撮りたくて枝をひねくり回していると枯葉を離れて移動し始めました。

やっと顔が見えました。

これでようやく全体像が分かります。

糞をしました。


最後に顔面アップ。

もう一枚。

(2025.05.08・明石公園)


2025年5月16日金曜日

クノギハバチ幼虫と寄生バチ幼虫(ツブヒメバチ亜科?)

 アベマキの幹や枝にクヌギハバチの幼虫が集まっているのを見てから約1週間後、再び様子を見に行くと、大量にいた幼虫はすべて姿を消していました。おそらく蛹化のために地面に降りて、落ち葉の間か地中に潜ってしまったのでしょう。一方、まだアベマキの葉に残っている幼虫も少数いましたが、よく見るとほとんど(あるいは全部?)が寄生者の幼虫に取りつかれていました。一見正常に見えた丸まった幼虫もその腹部に体長1mm強くらいの寄生幼虫をつけていて(写真1~4枚目)、また既に萎びかけて葉からだらりとぶら下がった幼虫には3mmを超える寄生幼虫が何匹もついています(5~6枚目)。完全に吸い尽くされた寄主の亡骸だけ残っているのもありましたが、寄生幼虫は蛹化のために離れていったのでしょう。寄生された幼虫が幹や枝では全く見られなかったのは、葉から移動するより前の段階で寄生を受けて動きを止められたせいだと思います。
この寄生者について調べてみたのですが、残念ながらよく分かりません。外部寄生ということから最初 Euplectrus (ヒメコバチ科)を思い浮かべたのですが、そちらの寄主は鱗翅目ですし、またコバチ類の幼虫にしては大きすぎます。やはりコマユバチ科が本命かと思って調べてみると、ハバチ類に寄生する種は多くないようです。ハバチヤドリコマユバチ亜科という仲間も存在しますが、こちらを見ると(全てかどうか不明ですが)“ハバチの幼虫の内部寄生性飼い殺し型単寄生蜂”ということなので該当しません。他の亜科の中にも候補があるのかもしれませんが調べがつかないので次のヒメバチ科に行くと、「寄生バチと狩りバチの不思議な世界」(一色出版)という本に亜科の系統関係と寄主、寄生方法に関するリストがあって、その中でハバチ類に外部寄生するものはハバチヒメバチ亜科とツブヒメバチ亜科の二つです。さらに同じ記事の中で、“ハバチヒメバチの1齢幼虫は卵のなかで、寄主が繭を作るのを待ち、寄主が前蛹になった後で卵から顔を出して食べ始める”とあるのでこれも当てはまりません。残ったのはツブヒメバチ亜科 Adelognathinae で、これはハバチ類幼虫に寄生する外部捕食寄生者であることは間違いないようですが、それ以上の説明を見つけることはできませんでした。他にも可能性はあるのかも知れませんが、とりあえずこれを有力候補としておきます。







(2025.05.08・明石公園)