2020年5月19日火曜日

カシエダフクレズイフシとカタビロコバチの一種(Sycophila sp.)

先日のマスダアラカシタマバチ単性世代の産卵を見てから十日あまり後、それらのハチが出たと思われる多数の脱出口の開いた枝(カシエダフクレズイフシ)に小さなカタビロコバチが来ていました。2匹の♂が、枝に開いた穴から顔を出した♀の脱出を待っているようです。おそらくSycophila 属の一種で、キイロカタビロコバチ S. variegata かも知れません。
カタビロコバチ科では多くの種が虫こぶを作る昆虫に寄生、あるいは同居することが知られていて、以前のブログでも何度か、この仲間が虫こぶなどに産卵する様子を掲載しています(2012.10.15,2012.10.23,2013.08.24,2016.10.22,2017.06.02)。
おそらくこのカタビロコバチもマスダアラカシタマバチの寄生者、または同居者なのではないかと思います。是非♀の誕生の瞬間を見たいと思い長い間待っていたのですが、ちょっと目を離したすきに穴から出てきて♂とともに消えてしまいました。

2匹の♂はこういう状況で見ない限り同種とは思えないほど体色が違います。やはりこの種もニッポンオナガコバチ♂のように、大型になるほど黒色部が広くなる傾向があるんでしょうか。




こちらのような場面を期待したのですが、今回は叶いませんでした。

(2020.05.14・明石公園)


2020年5月18日月曜日

ヒラタケシキスイ属の一種(Epuraea sp.)

伐採木の上を歩いていた小甲虫です。カメラを近づけると立ち止まったのでじっくり撮れると思ったのですが、数回シャッターを切っただけで転がり落ちてしまいました。体長約3.1mmで、ヒラタケシキスイ属 Epuraea の一種だと思います。



(2020.05.02・明石公園)


2020年5月17日日曜日

マスダアラカシタマバチ 単性世代(その2)

昨日の記事の、マスダアラカシタマバチ Plagiotrochus masudai の単性世代を採集して深度合成撮影しました。






(2020.05.02・明石公園)



2020年5月16日土曜日

マスダアラカシタマバチ 単性世代(その1)

アラカシの新梢で赤いタマバチが産卵していました。
初めて見るものですが、調べてみるとこれまで度々この時期に産卵を見ているマスダアラカシタマバチ Plagiotrochus masudai の単性世代だということが分かりました。これまで見ていた黒い個体はその両性世代だったのです。
同じアラカシの新梢といっても黒い両性世代の♀は必ず枝の真直ぐな部分の中ほどに産卵していましたが、この赤い♀は葉柄の付け根にとまって、雌花の花芽に産卵管を刺しているようです。ただ、多数の個体の内1、2匹、枝の途中で産卵しているものもいました。これまで見逃していたのは産卵部位のせいで目につきにくかったためでしょう。
このマスダアラカシタマバチは2010年に日本で新種記載された種ですが、その命名者の一人である井手竜也博士のサイト TAMABACHI JOHO-KAN でその生活環の概略が紹介されています。両性世代が産卵した枝に生じたカシエダフクレズイフシから春に単性世代の♀が羽化し、そして新梢の芽に産卵、翌年春にそのカシメフクレタマフシから両性世代が出現、そして枝に産卵し、翌々年の春に再び単性世代が出現、という3年周期の世代交番が解明されているようです。

ほとんどの個体は葉柄の付け根に生じた雌花の花芽に産卵していました。







枝の途中に産卵している個体もいました。

右の個体は花芽に、左のは枝に産卵しています。

この日、これらの♀の脱出口を確認していなかったのを思い出して、数日後同じ木を見に行きました。

去年伸びた枝に、たくさんの脱出口が開いていました。このように少し膨らんだ部分も、普通の枝の代わりが無いように見える部分もありますが、これがカシエダフクレズイフシですね。

開口部の直径は.07mm前後です。

(2020.05.02・明石公園)



2020年5月14日木曜日

ヨコバイを吸うケブカキベリナガカスミカメ

昨日の記事にもちょっと顔を出したケブカキベリナガカスミカメ Dryophilocoris miyamotoi ですが、同じアベマキの葉の裏でヨコバイに口吻を突き刺していました。おそらく、ヨコバイが羽化の準備に入ったところを襲ったのではないかと思います。以前にも何かの繭を吸汁しているのを見たことがありますが、かなり肉食志向の強いカメムシのようです。




(2020.04.29・明石公園)



2020年5月13日水曜日

アベマキハイボタマフシのタマバチ Latuspina abemakiphila

アベマキの葉裏に出来た虫こぶにタマバチが集まっていました。羽化して出て来る♀を待つ♂達らしいのでしばらく様子を見ていましたが、穴の中から覗いているハチに全く動きがなく、手にとって調べてみるとすでに死んでいました。
この虫こぶはこの公園のアベマキでよく見られるものですが、名前も形成者も分からず以前から気になっていたので、周囲にたむろしていた数匹を採集して帰りました。
この度改めて探してみたところ、国立科学博物館の井手竜也博士のTAMABACHI JOHO-KANというサイトで紹介されていることを知りました。虫こぶはアベマキハイボタマフシと呼ばれるもので、形成者はナラタマバチ族の Latuspina abemakiphila という種です。
この Latuspina abemakiphila は2016年に井手博士と九州大学の阿部芳久教授によって新種記載されています。上記井手博士のサイトでは Latuspina 属の特徴としてメスの尾節の先端部が三叉状(フォーク状)に分かれることが知られていたが、最近の研究によってそれが両性世代のメスのみに見られるもので、単性世代のメスでは見られないことが判明したということが紹介されています。そして日本産のLatuspina属全既知種6種のゴールと両性世代の♂♀・単性世代の♀の標本写真が掲載されていますが、ただこの L.abemakiphila に関しては単性世代はまだ発見されていないようです。

虫こぶに開いた穴を覗き込む2匹の♂。

♀の脱出を見られるかと期待しましたが…。

残念ながらすでに死んでいました。

周囲にいた数匹を採集して深度合成撮影。

まず♂。

たくさん付いているのは何の花粉でしょうか。

こちらが♀。

その顔。

重なり合って翅脈が見えにくいですが…。

三叉状に分かれた尾節の先端部。このカットだけ、上記TAMABACHI JOHO-KANでこの特徴を知るまで2週間も放置していた後で撮影したので腹部が乾燥のためぺしゃんこになっています。中央の突起に付着しているのは滲み出た体液でしょうか。

以下、おまけ。

ケブカキベリナガカスミカメ Dryophilocoris miyamotoi がゴールを吸っていました。

コガネコバチの一種も。


寄生目的だと思ったのですが、産卵シーンは見られず。

(2020.04.29 明石公園)