2025年4月1日火曜日

カスリウスバカゲロウの幼虫

 いつもの公園で、いつもの仲間数人での虫探し。Fさんが砂の中からウスバカゲロウの幼虫を掘り出してきました。立ち木の根元に粒の細かい乾いた砂が溜まった場所で、この仲間の幼虫はこういう環境でよく見つかるとのこと。いわゆるアリジゴクの親類ですが、すり鉢状の巣は作らず、浅い砂の下に潜んでいて通りかかった獲物を捕らえるそうです。長年同じ場所に通っていて、その存在を全く知りませんでした。幼虫がこんなふうに暮らすウスバカゲロウ類は幾種類もいるようですが、後日Fさんが、ウスバカゲロウの研究をしている知人に確認したところ、カスリウスバカゲロウ Distoleon nigricans の幼虫という返事だったそうです。

同じ場所から大小数匹出てきました。

これが最大個体です。撮影倍率を控えるのを忘れたので正確な体長は分かりませんが、大顎を含めると15mmくらいはあったように思います。

顔はやはりクサカゲロウの幼虫に似ていますが、そちらと違って大顎の内側にも歯が並んでいるのでより凄みがあります。


裏がえしてみると、大きな体や立派な大顎のわりに脚は貧弱です。

裏側から見た頭部です。クサカゲロウも含めアミメカゲロウ類の幼虫では大顎と小顎が合体して管をつくり、それで獲物の体液を吸収するのだそうです。

(2025.03.25・明石公園)



2025年3月30日日曜日

アカアシノミゾウムシとヤドリノミゾウムシ(深度合成)

 冬場のケヤキの樹皮めくりではアカアシノミゾウムシ Orchestes sanguinipes とヤドリノミゾウムシ O. hustacheiという、大変良く似た小さなゾウムシが一緒に見つかることがあります。実際、自分でも最初の頃はすべて同じ種だと思っていました。体色と大きさに違いで見分けられるようなのですが、保育社の甲虫図鑑を見ても、ネット上の記事を拾い読みしてみてもそれ以外の外見上の違いについては言及がありません。そこで先日、散歩がてらに心当たりのあるケヤキで両種を採集してきて、何か明確な違いが見つからないか、深度合成画像で見比べてみることにしました。
しかし例によってこのサイズの甲虫は扱いが難しく、折りたたまれた脚を拡げることがどうしてもできません。図鑑の画像などではどれもきれいに展脚されていて、しかるべき方法でやればできることなんでしょうが、私の技術では標本を傷つけずに展脚することはほぼ不可能なようです。あきらめてそのまま撮影しました。よく似た両種の違いを見つけてやろうと意気込んではじめた割には、重要な部分の多くが写真では見えないというまったく不満足な結果に終わってしまいましたが、とりあえず出来上がった画像を並べておきます。

まず、アカアシノミゾウムシ。体色変異の多い種ですが、これは触角と脚および上翅が赤褐色で他が黒色のタイプです。






次がヤドリノミゾウムシ。こちらの種は体色が安定しているようです。時間の都合で顔面の拡大は省略しましたが、本種の深度合成画像は以前の記事にも出しています。




以上の画像を見る限りでは、体色と大きさのほかにアカアシの方が若干細身のように見えますが、それ以外にははっきりした違いは確認できないようです。

(2025.03.20 神戸市西区伊川にて採集)

2025年3月23日日曜日

羽化するカシトガリキジラミ

 カシトガリキジラミ Trioza remota は幼虫で越冬し、早春まだ寒いころに羽化してくるキジラミです。個体数が多く期間も短いのでわりあい羽化を観察しやすい虫ですが、なにしろ小さいので見つけたときにはすでにかなり羽化が進行していることがほとんどで、最初の段階から羽化の一部始終を見る機会がなかなかありません。そこで今回は、間もなく羽化の始まりそうな幼虫に狙いをつけてしばらく粘ってみることにしました。


羽化間近の終齢幼虫です。普段は葉の裏で自分で作った浅いくぼみにぴったり収まって脚も見えないのですが、それが窪みから這い出してきてじっとしています。間もなく背中の皮がぱっくり割れて、と期待しながら見ていましたが・・・。

ずいぶん待たされてしびれを切らし、カメラの角度を変えて覗いてみたら、その間に背中が割れていました。

以下、あまり説明は要らないと思います。







尾端を見ると、出てきたのは♂でした。

しばらくあたりを歩き回った後、静止して翅を伸ばしはじめました。





背中が割れてから約50分、ほぼ翅が伸び切りました。

これは別個体ですが、羽化後しばらく時間が経過してやや体色が出てきて、翅脈も黒くなっています。これも♂です。

これらの終齢幼虫も羽化間近のようです。左下のはずいぶん小さいですが、やはり終齢でしょうか。

このカシトガリキジラミについてはこれまでにたびたび投稿しているので、いくつか記事のリンクを貼っておきます。


(2025.03.13/21・明石公園)


2025年3月20日木曜日

モチノキの幹のゴキブリ卵

 モチノキの幹の、ちょうど目の高さくらいのところにこんなものがくっついていました。

いわゆるがま口型のゴキブリの卵(卵鞘)です。長さ10mmほどで、10個ほど並んでいる丸い膨らみが一つ一つの卵に対応しているんでしょう。大きさや形からヤマトゴキブリかクロゴキブリだと思います。

がま口の綴じ目(?)には鋸歯状の突起が規則正しく並んでいて、なかなか精巧な造りに見えます。

こんなむき出しの場所ですが、孵化まで無事でいられるのかな?。

(2025.03.13・明石公園)

2025年3月18日火曜日

ヤナギグンバイ(深度合成)

 前回の記事で紹介した、ケヤキ樹皮下で越冬していたヤナギグンバイを数匹持ち帰り、スタック撮影しました。同じグンバイムシでもこちらこちら、あるいはこちらに比べるといささか地味な印象は拭えません。そういえば上にあげた3種は全て最近の外来種なので、それらに対してこちらは日本的な美しさとでも言うべきでしょうか。
採集した数匹のうち、♂は1匹だけでした。

まず♀から。

♀の腹面。

♀の側面。

これが♂ですが、背面からでは♀とほぼ見分けがつきません。触角の長さや複眼の大きさにも差がないようです。

裏がえしてみてはじめて♂だとわかります。

以下、各部のアップはすべて♀です。





(2025.03.09・三木山森林公園にて採集)

2025年3月16日日曜日

ケヤキ樹皮下のヤナギグンバイ

 先日のエルモンドクガ?と同じケヤキの樹皮下からヤナギグンバイ Metasalis populi も出てきました。すぐそばの小川に沿って数本のヤナギが植えられているので、そこから移動してきたんでしょう。ヤナギの木のあるところでは普通種のようですが、これまであまりご縁がなくて、このように集団で越冬しているのを見たのも初めてです。調べてみると、以前のブログに一度だけ出していました。数匹採集してスタック撮影しましたが、それはまた次の記事で。






(2025.03.09・三木山森林公園)


2025年3月13日木曜日

ケヤキ樹皮から出てきたエルモンドクガ(?)幼虫

* 2025.03.14・追記とタイトル変更 *

当日もご一緒した方より、ケヤキを食樹とし幼虫越冬という条件からエルモンドクガ Arctornis l-nigrum ussuricum ではないかというご指摘がありました。恥ずかしながら初めて聞く種名です。早速検索してみましたが、幼虫の画像はネット上にも数えるほどしかない上にどれも活動中の、もっと体の伸びた状態なので似ているようではありますが今一つはっきりしません。その中で「南四国の蛾」というサイトの「蛾の生態図鑑」に掲載されている画像を見ると、幼虫の地肌や頭部の模様が写っていて、それが下の画像とよく一致しました。やはりご指摘の通り、この種の可能性が高そうです。当初「不明幼虫」としていたタイトルには、ひとまず疑問符付きで種名を掲げておきます。

 いつもの虫仲間のお誘いで車に同乗させていただき、三木市の三木山森林公園での観察会に参加してきました。これはその時、同行の誰かがケヤキの樹皮下で見つけた幼虫です。見事に全身毛だらけ、と言うより棘だらけの毛虫で、調べればすぐに身元は割れるだろうと写真だけ撮らせてもらったのですが、帰宅してからいつもの幼虫図鑑はじめネット上の画像を探してみても意外に似たものが見つかりません。越冬状態のためか体が前後にだいぶ圧縮されているようにも見え、そのせいで余計に分かりにくいのかもしれません。科の見当もつきませんが、そのうちどなたかに教えていただけることを期待して出しておきます。

ちょっと前ピンになってしまいました。左が頭です。

長い毛の下から辛うじてお顔が見えますが、これも前ピンですね。

こっちがお尻。

このような重装備は主に寄生者対策だと思いますが、曲者ぞろいの昆虫界にはこんな槍ぶすまをかき分けて寄生卵を産み付けていく奴もいるんでしょうね、おそらく。


(2025.03.09・三木山森林公園)