2021年8月20日金曜日

スピロストマム(ネジレグチミズケムシ)

細長い繊毛虫、スピロストマム Spirostomum の一種です。以前のブログでも一度出したことがありますが、今回の方がかなり小型です。また囲口部の長さの細胞全体に対する比率も前回の種は1/2以上、今回は1/2未満と違いがあるので、おそらく別種でしょう。「淡水微生物図鑑」の説明に当てはめてみると、前回の大型種が S. ambiguum、今回が S. intermedium か S. minus のどちらかになりそうです。

この写真では画面下側が頭端です。囲口部が頭端から細胞の屈曲部のあたりまで伸びているのが見えます。

頭端は右を向いています。ネジレグチミズケムシという和名がつけられていますが、囲口部が細胞長軸の周りを緩く回転しながら伸びているのがその由来でしょう。

細胞の前半部です。ちょうど囲口部後端の細胞口がこちらに向いています。

細胞の後端(画面下)の透明部は大きな収縮泡です。

細胞後半。後端を横から見ると押しつぶしたように扁平です。ちょっと見えにくいかも知れませんが、小さな卵型の大核が数珠状に並んでいます。

頭端です。囲口部の繊毛列の規則正しい動きに感嘆します。

動画です。



(2021.08.04・明石公園の池にて採集)

2021年8月19日木曜日

マルサヤワムシ科シナンテリナ属の一種(Sinantherina ?spinosa)

 初めて見たワムシの群体です。いつもの公園の、干上がっていることの方が多いような浅い池で採集しました。
球形の群体ということではじめはテマリワムシ科の一種だろうと見当をつけて調べていたのですが、この科でこれくらいの規模の群体を作るのは Conochilus hippocrepis のみで、その種であれば頭頂に1対あるはずの腹触手が見当たりません。胴部にもそれらしきものは見えないのでそもそもテマリワムシ科ではなさそうです。そこであらためて図鑑(日本淡水動物プランクトン検索図説)を眺めると、マルサヤワムシ科シナンテリナ(Sinantherina)属が形も似ていて、やはり群体を作ることが分かりました。日本で知られている2種が掲載されていますが、そのうちの Sinantherina spinosa という種が開いた時の頭冠の形や腹面に並んだ棘、また普通50個体前後の球形群体を作ることなどの特徴が一致し、有力候補です。


今回は採集当日と翌日、計2個の群体を観察しましたが、これは最初の群体です。見つけたときはもっと大所帯だったのですが、周囲のゴミから分離したりスライドガラスに移したりしている間にかなりの数の個体が離れて行ってしまいました。

群体の中心付近には孵化前の卵や幼体が集まっています。


このように側面から見ると以前掲載した同じマルサヤワムシ科のプチグラ属(Ptygura sp.)に形がよく似ています。この画像では上に向いて弓なりに張り出しているのがいるのが腹面で、多数の小さな棘が並んでいるのが見えます。足と胴部の間の背面にある突起は肛門で、上記プチグラ属の動画ではこの肛門から排泄する様子が見られます。

以下は翌日撮影したやや大きな群体です。

最初の群体に比べて内臓や卵の色がかなり薄く見えます。機材や撮影法は全く同じなので、理由が分かりません。


こちらは孵化したばかりの幼体が多いようです。

微分干渉です。上記図鑑によれば、S. spinosa は「頭冠は開くと幅広い卵円形または四辺形に近い」とあります。


群体中心部の幼体と卵です。卵にはすでに眼点が見えるものもあって、孵化間近なのでしょう。

次の動画は2番目の群体です。


(2021.08.04・明石公園の池にて採集)

2021年8月18日水曜日

ミジンコワムシ

 ミジンコワムシ Hexarthra mira はどの図鑑を見ても全国に広く分布する普通種とされていますが、私が採集している範囲ではそう多く見かける種ではありません。太短い体幹の周囲にそれぞれ長さの異なる6本の太い腕が生えていて、全体として非常に厚みがあるので全体像を把握できる写真を撮るのが難しいワムシです。


体長は300~400µmくらいとしている資料が多いのですが、この個体は少し小さいようです。この日見たものはどれも同じくらいの大きさでした。


体の後端(この画像では右側)に拇指状の突起が一対あるのが同属多種との違いだそうです。

最大の腕は腹面中央から生えていて、中間部に数対の鈎状刺があるということですが、この個体ではその鈎状刺があまり発達していないようです。




動画です。最初の部分で、ハネウデワムシのように太い腕をひと振りして跳躍するのが見られます。



(2021.07.28 明石公園 剛の池にて採集)

2021年8月17日火曜日

カマガタツボワムシ

 これはカマガタツボワムシ Brachionus falcatus だと思います。被甲の前後の長い刺状突起が特徴的で、図鑑やネット情報を見ても紛らわしい形態の近似種は無さそうです。ゆっくりと回転しながら泳ぐ姿はなかなかカッコいいと思うのですが、どうでしょうか。







泳ぎながらときどき立ち止り、長い足を伸ばして振り回していました



動画です。


(2021.07.28・明石公園 剛の池にて採集)

2021年8月13日金曜日

ツバメシジミを捕えたアズチグモ

クズの葉叢の中にツバメシジミが、と思って覗き込むと、すでにクモの犠牲になっていました。



チョウを捕えたのは♀のアズチグモ Thomisus labefactus でした。

(2021.08.06・明石公園)

2021年8月12日木曜日

カメムシ卵に産卵するナガコバチ科 Anastatus sp.

 アカメガシワの葉の先の、細く伸びた部分にカメムシの卵、そしてその卵に産卵中の寄生バチの姿がありました。

ハチは昨年キマダラカメムシの卵の上で見たものとおそらく同種で、ナガコバ科 Anastatus 属の一種でしょう。今回の卵は大きさからみてキマダラではなくクサギカメムシあたりかも知れませんが、12個の卵のうち10個はすでに空で、卵殻に開けられた穴の様子を見るとこれらの卵から出てきたのはすべて寄生者だったものと思われます。

ナガコバチが産卵管を突き刺しているのははまだ穴の開いていない2個のうちの一つですが、これらの卵もかなり黒ずんできていて、また他の卵の運命から考えても中身はすでに寄生者に置き換えられているのではないかと推測されます。とすれば今産卵しているこのハチは2次寄生者と言うことになるのでしょうか。

2013年の記事の、マイマイガの卵塊に産卵していたものも見たところ同種のようです。


同じ卵の反対側から産卵管を刺しました。


昨年の、また別のキマダラカメムシ卵からはその後 Anastatus sp. の雌雄が羽化してきましたが、今回は採集はしませんでした。

(2021.08.06・明石公園)

2021年8月11日水曜日

サクラの葉裏に産卵するナシグンバイ

ナシグンバイ Stephanitis nashii の産卵、あるいはそれらしき行動はこれまでに何度か見ているのですが、葉をつまんでレンズを近づけるとすぐに中止してしまうので、満足に撮影出来たためしがありません。今回も一部始終とは行きませんでしたが、確かに産卵行動と思える場面を撮ることができました。

サクラの葉裏で、腹部を葉面につけています。後方に黒いシミのように見えるのは産卵痕で、この同じ♀によるものと思われます。


まもなく腰を上げましたが、腹端の先の葉面には新しい産卵痕が見えます。

少し移動すると、今度は口吻を突き刺しました。

しばらくして口吻を抜くと少し前進し、さきほど口吻を刺していたあたりに産卵管を突き刺しました。

どうやら多くのゾウムシなどと同じように、産卵のために前もって口吻で穴を開けるのではないかと推測されます。

そのまま産卵か、と見ていたのですが、間もなく産卵管を抜いて立ち去ってしまいました。やはりこちらが邪魔をしているせいで実際の産卵には至らなかったようです。

母虫が立ち去った後の産卵痕です。おそらくすべて同じ1匹が産み付けたものと思われますが、よく見ると画面の隅っこに小さなハチが半身を見せています(赤矢印)。昨年も見た、ナシグンバイの卵に産卵するホソハネコバチの一種でしょう。昨年の経験からこのハチが寄主の産卵している最中にも遠慮なく近づいて寄生卵を産み付けることが分かっていたので、この時もかなり注意して探していたのですが、帰宅後パソコンのモニタを見るまで全く気が付きませんでした。残念。

(2021.08.06・明石公園)