2023年7月14日金曜日

久しぶりのゾウリムシ

 実物を見たことがなくても名前くらいは誰でも知っている、ゾウリムシ(Paramecium)の一種です。この前出したのがいつだったかと調べてみると、すでに12年も経っていました(こちら)。どちらも同じ微分干渉・ストロボ撮影ですが、12年前とは機材も替わり、少しは要領もよくなっているので画質もいくらか改善されたと思います。
水田で採ってきたサンプルで、採集当日に見た時にはほとんど見かけなかったのが、室内に数日放置していた後で調べると大量に泳ぎ回っていました。


カバーガラスで適度に押さえつけられた状態で撮影していますが、本来の細胞形はほぼ棒状で、もっと細身に見えます。この写真を含めて以下4枚、細胞中心からカバーガラスに接するあたりまで、順にピントをずらして撮っています。




中央左寄りの大きな黒い楕円が大核、その右側から食い込んでいる丸くて小さいのが小核、下側左右に丸い穴のように見えるのが収縮胞、そして口部は上側です。

収縮胞は数秒おきに消長を繰り返し、その際にお馴染みのお日さま印が現れます。

細胞表面はこんな繊毛に覆われています。

動画です。


(2023.07.06)


2023年7月13日木曜日

ヤバネウラシマグモ♂

 薄暗い林の中で、モチノキの幹になにやらくっついているなと思ってルーペで眺めると、見慣れない細身のクモでした。歩脚を1本失っていて、少し弱っているのかレンズを近づけても逃げません。体長は約3.3mm、触肢が大きいので♂でしょう。一見黒っぽくて地味ですが、拡大すると頭胸部の鱗毛が金色銀色に輝いてなかなか綺麗なクモです。
手元の図鑑でウラシマグモの仲間と見当をつけ、ネット情報からヤバネウラシマグモ Phrurolithus pennatus に落ち着きました。本州・九州に分布する徘徊性のクモだそうです。





(2023.07.02・明石公園)

2023年7月11日火曜日

ミツオホシハナノミ

 ミツオホシハナノミ Hoshihananomia mitsuoi が来ている、という耳よりな情報をいただいたので早速見に行きました。現場はかなり衰弱したサクラの木で、幹は地衣類に覆われています。じっと見ていると、ブンという羽音とともに1匹飛んで来て、幹を歩きはじめました。さらにもう1匹。この大型のハナノミはまだフィルムカメラを使っていた時代に二、三度見たきりで、およそ20年ぶりの再会です。
このあたりで見かけるハナノミと言えばどれもこちらこちらのような小さな種ばかりで、このように体長1センチを超えるような大型種は貴重品です。幼虫はサクラで育つらしく、以前に見た時も立ち枯れのサクラで産卵していました。今回も、少なくとも1匹は♀だったようで、歩き回りながらしきりに産卵管を伸ばしていました。

ほとんど立ち止まることなく歩き回るので、追いかけるのが精一杯です。

長時間追いかけた末にようやく、数秒間立ち止まってくれました。ピンと跳ね上げた尾節板が素敵ですね。


これは産卵中らしく、尾節板も下げています。しばらくの間この姿勢でいたのですが、場所が悪くこの角度からしか撮れませんでした。二十数年前にはじめて見た時はもっと多数の個体が一本の木に集まっていましたが、そんな情景をまた見たいものです。

(2023.07.07・明石公園)

2023年7月10日月曜日

増えてきた外来ハゴロモ(Pochazia shantungensis)の幼虫

 去年までは公園内でも居場所が限られていた外来ハゴロモ Pochazia shantungensis ですが、この6月に入ってから園内いたるところで幼虫が見られるようになりました。
ネット情報によればチュウゴクアミガサハゴロモという和名がつけられたそうです。


同じフジの蔓についていた、どちらも終齢と思われる2匹ですが、背中を蔽うワックスの色がずいぶん異なります。何か理由があるんでしょうか。

(2023.06.24・明石公園)

2023年7月9日日曜日

タケトラカミキリ

 生垣の隙間を塞ぐように組まれた細い竹に、あちこち小さな穴が開いているのが以前から気になっていたのですが、この日はじめて犯人を見つけました。タケトラカミキリ Chlorophorus annularis です。

数匹いましたがどれも忙しく歩き回ってなかなかじっとしてくれません。この交尾中のペアがようやく少し落ち着いて撮らせてくれましたが、情けないことにカメラブレしてしまいました。

どちらも穴から出てきたばかりなんでしょう、体中に木屑(竹屑?)をつけています。♀はしきりに触角や脚の手入れをしていました。


産卵中の♀もいましたが、あいにく場所が悪くこれが精一杯の撮影でした。

(2023.07.07・明石公園)


2023年7月8日土曜日

マルマダラヒロクチバエ

 先日キマダラヒロクチバエを出したばかりですが、最近いつもの公園でそれによく似て体が真っ黒の種を見かけるという話を虫仲間から聞いていました。最初はこれのことではないかと思っていたのですが、ひと月ほど前、ようやく自分で見つけたのは全く初見の種です。そのことを別の虫仲間に話すと、多分これだろうと教えて貰ったのがAclerisさんがいもむしうんちは雨の音で紹介されてるマルマダラヒロクチバエ Pterogenia sp.でした。和名は付いていますが学名は未定だそうです。写真で見る限り同種で間違いないでしょう。
はじめ見つけたのはエノキの立ち枯れの上をウロウロしているのが1匹だけだったのですが、すぐに逃げてしまってピンボケ写真しか残らず、約3週間後に同じ木を見に行くとやはり1匹だけ、今度は慎重に近づいてなんとか数枚撮りましたが、角度を変えて撮る前にやはり逃げてしまいました。キクラゲの生えたような枯木で、Aclerisさんが推測しておられるように菌類を食べていたのかも知れません。

この写真では腹部背面に黄色の細い縞しか見えませんが、Aclerisさんの標本写真ではこの黄色い部分が腹部腹面に広がっていることが分かります。“節間膜から体内の色が透けて見えるから”だそうです。


(2023.07.07・明石公園)


2023年7月7日金曜日

自由遊泳型のカンパネラ(Campanella sp.)

 カンパネラ(Campanella)は大型で、柄の収縮しないタイプのツリガネムシです。他の多くの同類と同じく普段は柄で他物に付着して生活していますが、この日公園の池で採ってきたサンプルには柄を離れたカンパネラが無数に泳ぎ回っていました。固着性のツリガネムシでも細胞分裂後の娘細胞や、環境悪化などの原因で柄を離れた細胞は後部に繊毛環を持った自由遊泳型(Telotroch)となります。以下、1~2枚目と3~7枚目はそれぞれ同一倍率です。撮影後、一晩置いてから見ると泳いでいた細胞の多くはシャーレの底に定着していました。



この写真では細胞口が右を向いています。中央に曲がった棍棒上に見えるのが細胞核です。

細胞後部の遊泳用の繊毛環がよく見えます。


細胞が上を向き口部の繊毛環がカバーガラスに接した状態です。長時間観察していて時たま出現しますが、たいがい数秒間しか続きません。撮影には根気が要りますが、繊毛の秩序立った動きにはいつもながら感嘆します。

ピントを少し奥に移動すると核や収縮胞、食道が見えてきます。

(2023.06.06・明石公園の池にて採集)