2024年6月3日月曜日

ヒメコブハムシの産卵

 昨日の記事のヒメコブハムシ Chlamisus diminutus を撮影したイタドリの群落を一週間後に再び訪れると、運よく産卵中の♀が見つかりました。葉柄の付け根に近い茎の上ですが、同属のムシクソハムシツツジコブハムシで見たのと同じように、排出した卵に糞を塗り付けている最中のようです。残念ながらすでに作業の最後の段階で、卵本体は糞に覆われて見えません。また最初は気づかなかったのですが、カメラの角度を変えてみると作業中の卵の周りにすでに糞で覆われた卵が3個見えてきました。ムシクソやツツジコブでは複数個をかためて産み付ける習性はないと思われるので、これはちょっと意外です。また、完成した“糞ケース”の天辺に細長く伸びた突起がつくのも他の2種には見られない特徴です。


後脚で支えて回しながら糞を塗り付ける動作は他の2種と同じです。



反対側から。

すでに3個の“糞ケース”が完成していました。


先に完成していた糞ケースです。高さは突起部を除いてちょうど1mmほど。幼虫が孵化するとおそらくケースの底、つまり茎に接した部分に穴を開けて顔を出して歩きはじめるのだろうと思いますが、この長い突起のついたケースを背負って歩く姿はちょっと面白いかも知れません。

作業を終えた♀は少し前に移動してイタドリの枝を齧りはじめました。周囲の皮が剥がれたように見える部分もこの♀の齧り跡でしょうか。最後に完成した糞ケースに突起部がないのは、撮影で邪魔をされたせいで仕上げを端折ったのかもしれません。

(2024.06.01・明石公園)

2024年6月2日日曜日

ヒメコブハムシ

 イモムシの糞に似たハムシ、コブハムシ属 Chlamisus は国内に9種の既知種が分布しているそうです。その中でこれまでに撮影できたのは共に普通種のムシクソハムシ C. spilotus とツツジコブハムシ C. laticollis の2種で、このヒメコブハムシ C. diminutus は3種目になります。イタドリで見つけたのですが、多くが葉ではなく茎や葉柄についていて、それを齧っているものもいました。この属は図鑑でも図示されている種が少なく調べにくいのですが、甲虫図鑑の検索表に照らして黄褐色の附節と触角以外のほぼ全身が黒いことや前胸腹板後突起の形から、ヒメコブで間違いないと思います。ただし下の写真の個体は体長が約3mmあり、検索表の体長(2.2~2.8mm)をやや上回ります。

何匹か見つけたうちの1匹です。葉柄の付け根にうずくまっていました。

撮影を始めたことで目が覚めたのか、少し移動して葉柄を齧り始めました。




ムシクソやツツジコブと同様、鞘翅の合わせ目はファスナー状です。


上とは別の個体ですが、深度合成撮影のために1匹持って帰りました。

上の個体より小型で、体長約2.6mm。


前胸背板に貼り付いた汚れがどうしても取れませんでした。

鞘翅の合わせ目。

展脚も試みたのですが、やはり私の手には負えません。とりあえず同定ポイントの一つである前胸腹板後突起が確認できるようになったことで満足して、壊してしまう前に止めました。

画面中央よりやや下、下を向いた鏃のような形をしているのが前胸腹板後突起です。

(2024.05.25・明石公園)


2024年5月31日金曜日

ジョロウグモの子どもたち(団居)

 トウネズミモチの、白い蕾をつけた枝の間に子グモの団居(まどい)ができていました。ジョロウグモ Trichonephila clavata だと思います。四つほどの塊に分かれていましたが、同じ一つの卵嚢から出てきた兄弟たちなのか、それぞれ別の卵嚢から生まれたものなのか分かりません。ジョロウグモは大型のクモとしてはこの公園で最も目につく種ですが、秋も遅くなってから産卵し、卵嚢を守る♀の姿が年を越しても見られることがあります。



子グモの体長は1.7mmほどです。枝に触れるとクモの子を散らしてしまうので、アップを撮るのにはちょっと苦労しました。

(2024.05.21・明石公園)


2024年5月30日木曜日

ハエヤドリクロバチ科の一種・♂

 カキの葉裏にとまっていた、おそらくハエヤドリクロバチ科 Diapriidae の♂です。この仲間は以前のブログで、ほとんど冬場に撮ったものを何度も出していますが、こんなに長い触角を持ったものは初めて見ました。胸部や頭部の様子はこちらによく似ているので、同種か近縁種の♂かも知れません。すぐに逃げられたのでお見せできる写真はこの出来の悪いのが1枚だけです。

翅端まで約2.3mm、体長は1.7mmくらいです。

(2024.05.21・明石公園)

2024年5月29日水曜日

キンイロエビグモ

 アラカシの幹を歩いていたキンイロエビグモ Philodromus auricomus です。同属のキハダエビグモ P. spinitarsis と同様いつもの公園でもごく普通のクモですが、ほとんど樹幹で暮らしているキハダと違ってこちらは草の葉の上などを徘徊していることも多いようです。足が長いので大きく見えますが、体長は7mmちょっとです。




(2024.05.21・明石公園)


2024年5月28日火曜日

クロウリハムシの雌雄

 ギシギシの葉の葉の上で、クロウリハムシ Aulacophora nigripennis が交尾していました。すぐ近くのに生えているカラスウリに集まってきて相手を見つけたのでしょう。あまりに普通種なので普段はわざわざカメラを向けることもないのですが、ちょうど良い場所にとまっていて、黒と黄色のコントラストもきれいなので久しぶりにじっくり撮影しました。

よく見ると、♂は前・中脚を宙に浮かして後脚と交尾器だけで体を支えています。



(2024.05.21・明石公園)

2024年5月27日月曜日

ツツジコブハムシの産卵

 イモムシの糞に似たハムシがツツジの葉の先にとまっていたので、逃げるなよと念じながら葉をつまんで持ち上げてみると、ちょうど産んだばかりの卵に自分の糞を塗り付けている最中でした。ツツジコブハムシ Chlamisus laticollis だと思います。同属のムシクソハムシ C. spilotus に酷似していますが、ツツジで産卵していたので間違いないでしょう。
すでに卵は半分くらいまで覆われていて、それを左右の後脚で器用に操りながら糞をつけ足していくのですが、このあたりの手順は以前にムシクソハムシで見たのと全く同じです。撮影のためにずっと葉をつまんでいるので振動も伝わり、それを警戒してか時々中断も入りましたが、どうにか最後まで仕事をやり終えてくれました。卵から孵った幼虫は糞ケースの片方に穴をあけて顔を出し、成長につれて自分の糞をつけ足して建て増ししながらこの家を背負って歩くことになります(その仕事に都合の良いように、幼虫の体はこちらのような特異な形をしています)。そして最後にやはりこの糞ケースの中で蛹になり、羽化した成虫はこの糞の家の天辺を(こちらのように)噛み破って出て行くのだろうと思います。










撮影を始めてから産卵を終えてハムシが立ち去るまで約30分。お疲れさまでした。

(2024.05.18・明石公園)