2025年8月29日金曜日

蛾の卵に産卵するタマゴコバチ科の一種

ネズミモチの葉の上にきれいな緑色の卵が乗っていました。虫の卵と見れば寄生バチが来ていないか探してみるのが習慣になっているので、今回もルーペを近づけてみると、いました。小さな黄色いハチが卵の周囲を歩き回っています。
卵は高さが1.5mm、長径2mmくらいの楕円体です。この場所ではシモフリスズメの幼虫を何度か見ているので、大きさを見ても同種の可能性が高いでしょう。ハチは体長約0.6mm、タマゴコバチ科(タマゴヤドリコバチ科) Trichogrammatidae で間違いないと思います。ネット上ではよく似たハチの画像がキイロタマゴバチ Trichogramma dendrolimi として多く見られますが、なにぶん微小な種なので生態写真での同定は無理でしょう。
ハチはときどき立ち止まっては腹端を卵につけるという動作をくりかえしながら歩き回っていましたが、やがて葉面に近い場所に目標を定めたようで、産卵を始めました。
タマゴコバチ類の産卵行動を見るのは初めてですが、寄主の卵から羽化して出てくる場面は何度か見たことがあります(こちらこちら)。





ここでようやく腰を落ち着けて産卵を始めました。

卵に刺さった産卵管が見えます。



20分ほど産卵管を刺したままの姿勢を保っていましたが、

もう少し大きく撮ろうとレンズを交換している間に産卵管を収めてしまいました。

同じハチの仲間とはいえオオスズメバチの触角のひと節に納まるくらいの大きさですが、それでもちゃんとハチとしてのすべての構造を備えているのが驚きです。

(2025.08.19・明石公園)


2025年8月27日水曜日

アカコブコブゾウムシ

  舗道わきのイノコヅチの茎に、見覚えのある虫が見覚えのある姿勢でしがみついていました。アカコブコブゾウムシ Kobuzo rectirostris です。以前のブログに出したのは別の場所で撮ったものでしたが、それ以降にこの明石公園でも見た記憶があるような無いような、はっきり思い出せません。前回は枝に頭を持たせかけて昼寝をしているような姿勢が印象に残りましたが、今回もやはり同じ姿勢です。ネット上の画像にも同様の場面を捉えた画像が見つかるので、これが本種の正常な休息姿勢なんでしょう。口吻を除いた体長は約10mmです。幼虫はドングリの中で育つそうです。
因みに本種とは属が異なりますが、和名も見かけもよく似たクワノコブコブゾウムシという種があって、こちらは希少種とされているようですが、この公園でも何度か見ています。





(2025.08.09・明石公園)


2025年8月26日火曜日

ナガセスジホソカタムシ

 腐朽が進んだ切り株の上に何かいそうな気がして、目を凝らして探しているとこの小甲虫が見つかりました。ナガセスジホソカタムシ Bitoma parallela だと思います。以前のブログにも一度出していますが、朽木の樹皮下で越冬していた個体だったので木屑にまみれてちょっと冴えない姿でした。今回のはわりときれいで上翅や前胸背板の彫刻がよく見えます。体長は約3.5mmです。
ちなみに、ホソカタムシ類と呼ばれる一群は以前はホソカタムシ科としてまとめられていたのですが、近年の研究で旧ホソカタムシ科は多系統であるとして、そこに含まれていた種は3つの科に分けられました。このナガセスジホソカタムシも前回の記事ではホソカタムシ科としていましたが、現在はアトコブゴミムシダマシ科に含められています。





(2025.08.09・明石公園)


2025年8月25日月曜日

カシコスカシバ

 歩いている足元から飛び立ったのが見慣れぬハチのようだったので、少し先の草の葉にとまったのを見に行くと、ハチではなくカシコスカシバ Synanthedon quercus でした。このあたりで見られる数少ないスカシバガ科の仲間の一つです。ずっと以前はこの公園でもアラカシの幹に産卵に来た♀をたまに見かけたものですが、もう長い間お目にかかる機会がありませんでした。またこんな風にじっとしているところを間近に見るのも初めてですが、とても美しい蛾です。


頭から尾毛の先まで約16mmです。



(2025.08.03・明石公園)

2025年8月23日土曜日

ヒメグンバイ幼虫とタカラダニ

 アベマキの葉裏にひしめくヒメグンバイの幼虫たちを眺めていると、よく目立つオレンジ色の点が見えました。タカラダニの仲間(タカラダニ科)です。グンバイ幼虫の複眼のすぐ上あたりに取り付いて、脚はどこにも触れず突き刺した口吻だけで体を支えています。丸々と太って皴一つ見えないのはすでに寄主の体液を腹いっぱい吸っているせいでしょうか。それでもグンバイの方は自分も葉に口吻を刺して食事中のようでした。グンバイ幼虫の体長は約1.6mm、タカラダニは0.6mmくらいです。小さな虫ばかり探しているとこのような場面を度々見かけますが、寄主になる虫も様々で、過去の記事から探してみるとクモヨコバイキジラミアブラムシなどが被害に会っていました。タカラダニの方も、種によってそれぞれ好む獲物が異なるようです。






(2025.07.30・明石公園)



2025年8月22日金曜日

ムシクソハムシの幼虫巣

 サクラの葉裏にくっついていたこのイモムシの糞のような物体は、ムシクソハムシの幼虫巣です。産卵時に母虫が卵に塗り付けた糞の覆いを、孵化した幼虫がそのまま被って歩き、成長につれて自分の糞を付け加えながら大きくしていったものです。
ムシクソハムシ Chlamisus spilotus には同属にツツジコブハムシ C. laticollisという酷似種があって、成虫では腹面を見なければ確かな判別は難しいのですが、幼虫巣は表面が黒っぽくてもっと滑らかなようです。またツツジコブはもっぱらツツジ類につくのに対して、ムシクソの食草はコナラ・クヌギ類以外にもある程度の幅があるようなので、この巣はムシクソハムシのものとして良いでしょう。
巣の長さは4.5mmくらい。今回は顔を見せてくれませんでしたが、中にはこんな幼虫が入っているはずです。あるいは、巣がかなり大きいのですでに蛹になっているのかも知れません。ちなみにこの公園では同じ属のヒメコブハムシ C. diminutus という小型の種も確認していますが、こちらの幼虫巣はずっと細身ですっきりした形をしています。

巣の表面には糞を付け足して大きくしていった後が畝状に残っていますが、途中からその角度が変化しているようです。卵から飼育して観察すれば、その理由が分かるかも知れません。




(2022.07.30・明石公園)

2025年8月21日木曜日

鳥の糞に集まるキマダラカメムシ幼虫たち

 キマダラカメムシはセミのように木の幹に口吻を突き刺して樹液を吸う妙なカメムシですが、鳥の糞も好物のようです。この日はサクラの葉の上に数匹の幼虫が集まって、せっせと鳥の糞を吸っていました。
ところで、以前のブログに“鳥の糞を食べるキマダラカメムシ”というタイトルで、葉の上で白く乾いた“糞”を口吻でこすり落とすようにして吸っている成虫たちの写真を出していますが、調べてみるとこの白い粉のようなものは鳥の糞ではなく尿であって、それに含まれる尿酸が結晶したものなのだそうです。この幼虫たちもひょっとしたら糞と一緒に排泄される尿酸が目当てなんでしょうか。

いつもの言い訳ですが、そよ風に葉が揺れて、かと言って手を添えるわけにもいかず、ピンボケばかり量産しました。

大小の幼虫が争うでもなく、仲良く重なり合って食事をしているのが微笑ましいですね。


(2025.07.23・明石公園)