先日出したマルサヤワムシを眺めていた際、同じプレパラートの中をこんなものが泳ぎ回っているのに気づきました。
葉緑体を持っているようですが、一端の白く膨らんだ部分の周囲に生えた繊毛を動かして泳いでいます。しかも、探せば他にも同じものがいくつか見つかりました。最初に見た時に確かにこんなものはいなかったはずなのに、と首をひねりましたが、やがて一緒に封入したサヤミドロ(Oedogonium sp.)が放出した遊走子だということが分かりました。
放出はその後も続いて、何度かその瞬間を見ることが出来ました。以下、放出の過程です。
放出直前の細胞。通常の糸状細胞と同じように見えますが、右上端の色が濃くなっています。
突然、二つの細胞の間が折れるように曲がって、下の細胞の内容物が外に出てきます。
出てきた遊走子は透明の袋に包まれています。
まだ袋に包まれていますが、すでに一端に繊毛環が出来ていて、盛んに動かしています。
やがて袋から出て泳ぎ出した遊走子は最初の写真で見た細長いひょうたん型になり、適当な場所を見つけて着生するのだろうと思います。
動画も撮りました。時間がかかるので8倍速に編集しています。
「サヤミドロ属に基づくサヤミドロ科藻類の観察と研究」(山岸高旺・斎藤栄三)という論文(こちらでダウンロードできます)に、「採集材料をシャーレ内に入れておくと、翌日くらいには、いっせいに遊走子を放出して水面に浮かんだり、シャーレ内壁の水面の位置近く付着して、数日中には、それらが糸状体に発育してくるのが見られる。採集材料をシャーレ内などに入れると、なぜ、すぐに遊走子を放出するのか、その理由はわからない。」とあります。今回の、水でプレパラートに封入したサヤミドロも同様の状態だったのでしょう。
何度かの放出場面を写真や動画に撮っている間に、カバーガラスの下は遊走子で一杯になっていました。
遊走子の放出はサヤミドロ類が行う無性生殖の手段ですが、他にもいくつかの方法による無性生殖が知られていて、また有性生殖も行うそうです。
(2019.11.25・明石公園 桜堀にて採集)
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