最近いつもの公園でご一緒することの多い虫探しの達人のFさんが、産卵中のマガリケムシヒキを見つけました。イネ科らしき枯草の折れた茎の先端にとまり、腹端を茎の穴に差し込んでいます。幸い、何枚か撮る間その姿勢でいてくれましたが、まもなく腹端を抜いて飛んでいきました。茎の穴を覗き込んでみると、内径0.7mmばかりの筒の奥に詰め込まれた複数の卵が見えます。この季節、公園を歩けば必ず何匹かは見かける普通種ですが、?十年も虫撮りをやっていて産卵行動を見たのはこれでやっと二度目で、一度目は14年も前のことでした。貴重な場面を見つけてくれたFさんに感謝するほかありません。
その一度目では、本種がエノキの樹皮の隙間に腹端を差し込んで産卵していました。林の中で見かけることの多い種なので産卵も樹幹で行われるのかとその時は解釈していましたが、今回は完全に開けた場所なのが意外です。
ムシヒキアブ類の幼虫は、生態が分かっているものでは地中や朽木の内部で他の虫や幼虫を捕食して暮らしているものが多いようなので、この卵から孵化した幼虫もおそらく地面に降りて地中生活を送るのでしょう。以前に一度、アラカシの枯れ木からトゲツヤイシアブが羽化してくるところを見たことがあります。
2025年5月15日木曜日
マガリケムシヒキの産卵
2025年5月8日木曜日
エノキハトガリタマフシとエノキトガリタマバエ幼虫
エノキの葉に、小さな砲弾型の虫こぶが出来ていました。タマバエ科のエノキトガリタマバエ Celticecis japonica によって作られた、エノキハトガリタマフシと呼ばれる虫こぶです。
2025年5月5日月曜日
オドリバエ科 Rhamphomyia SP.
先日のクロアシボソケバエにちょっと似ていますが、こちらはケバエではなくオドリバエの仲間です。アカメガシワの、その名の通り赤い毛におおわれた新葉の上に乗っていました。幸い翅脈もはっきり写っているので、いつも参考にしている三枝豊平さんの“日本産双翅目の図解検索システム Ⅰ オドリバエ科”の検索表を辿ってみると、いくつか写真では確認できない部分も残るものの、Rhamphomyia(ホソオドリバエ属)の特徴によく一致します。MNDの翅脈図を見てもよく合っているのでこの学名でネット検索すると、昔の自分の記事が出てきました。今回と同様♂個体で非常によく似ていますが、翅の色が少し違うように見えるので別種かもしれません。それにしても、撮った写真もその後の身元調査も13年前と全く同じことをやっているのに我ながら笑ってしまいます。こちらの記事の♀も同属だと思います。
2025年5月3日土曜日
クロアシボソケバエ
引き続き三木山森林公園で撮った虫です。
何の木か忘れましたが、葉裏にとまっていた真っ黒のケバエです。ネット上には同種と思われる画像がクロアシボソケバエ Bibio holomaurus としてたくさん見られますが、おそらくよく似た種も多いだろうし、何か決め手があればと思って探すと、運よく「廊下のむし探検」でこの種が取り上げられていました。このブログでは毎回、採集した標本の各部の顕微鏡写真を示しながら、専門論文の検索表から同定のポイントを嚙み砕いて詳しく説明されていて、私のような素人には大変参考になります。今回撮影した写真をその記事に照らして調べてみると、いくつか確認できない部分は残りますが多くの特徴は一致しました。他に酷似種が存在しなければクロアシボソケバエとしてよいと思います。
2025年4月19日土曜日
ジェーンアシワガガンボ?
いつもの公園で多数のガガンボが発生している、という情報をいただいたので、早速見に行ってきました。場所は幹が地上付近で数本に分かれたエノキで、その幹の間に出来た窪みに溜まったわずかな水の中から羽化してきているらしいのです。最初に出かけた日は強い西風が吹いていてあまり期待していなかったのですが、幹の周りで♀2匹♂3匹が見つかりました。♂は風にも負けずときどき飛び回っています。また小さな水たまりには一見何かの糞のような黒っぽい抜け殻がいくつも残されていました。さらにその二日後に見に行くと、交尾中のペアひと組の他に2、3匹の♂が、やはり落ち着きなく幹の周りを飛び回っていました。羽化した成虫が何日間もその場に留まっているとは思えませんし、今回情報をくれた方の話からも、どうやらしばらくの間は連日羽化が続いていたようです。
さてこのガガンボの種名ですが、ネット上でジェーンアシワガガンボ Tipulodina joana として多数の画像が見られるものによく似ています。中でも「廊下のむし探検」のこちらの記事では同種の特徴が詳しく調べられていました。ただこの Tipulodina 属にはもう一種、T. nipponica(ニッポンアシワガガンボ)という種が存在して、両種を区別する特徴については上記の記事にもほとんど説明がありません。そこでさらに探してみると、「YAHOO!知恵袋」という質問サイトにこちらのような記事がありました。孫引きになりますが、東海大学出版の「日本産水生昆虫」によるとT. joanaは「後脛節基部近くに幅の広い白色帯を有し、ふ節は広く黒色」、T. nipponicaは「後脛節は基部近くに幅の狭い白色帯(3mm)、ふ節は第1ふ小節と第5ふ小節の一部を除き白色」ということです。その説明をもとにあらためて画像を調べてみると、今回のガガンボはやはりジェーンアシワガガンボでよさそうだという結論に達しました。ただしふ節については、♂ではほぼ黒色ですが♀では各脚に白、あるいは淡色の部分があり、少し疑問も残るので、タイトルには“?”をつけておきます。
2025年4月7日月曜日
ビロウドツリアブ
春先の野山を歩くとよく目につくビロウドツリアブ Bombylius major ですが、撮影したのは久しぶりです。最近は町中の公園ばかり徘徊しているので目にする機会が減ったという事情もありますが、かなり敏捷な虫で見つけてもたいがい撮る前に飛んで行ってしまうということもあります。たかが普通種という気持ちもあって時間をかけて追い回す気にもなりません。それが今回の個体は珍しく大人しくしていてくれたので以前のブログで2016年に出して以来9年ぶりに登場することになりました。
ツリアブの仲間はどれも寄生性ですが、この種はヒメハナバチ類に寄生するそうです。そして他のツリアブ類と同様、産卵の前には地上に降りてお尻を砂地にこすりつけ、腹端にある「砂室」に砂粒を取り込むと言う面白い習性が知られています。卵に砂をまぶして寄主の目を誤魔化すためと言いますが、それがどんな風なカムフラージュなのか、以前にもちょっと資料を探してみましたが具体的な説明は見つかりませんでした。この砂集めの様子は本種ではまだ見たことがありませんが、以前にスキバツリアブやマエグロツリアブで同じ行動を撮影しています。
2025年3月3日月曜日
落ち葉の中のハエ幼虫(タマバエ科?)
キリの落ち葉をひっくり返しているとオレンジ色の粒が点々とくっついているのが見つかりました。ルーペで覗くと双翅目の幼虫です。腐食性か菌食性のタマバエ科だと思いますが、ハエの幼虫はどれも同じようなウジ虫型なので別の科かもしれません。体長は、大きいもので1.5mmくらいです。
2024年11月18日月曜日
トゲナシミズアブ属の一種(Allognosta SP.)
銅色に輝く、体長16mmほどのミズアブ科の一種です。トウネズミモチの葉にとまっていました。翅脈や小楯板に棘がないことから、トゲナシミズアブ属(Allognosta)だと思います。翅がやや白濁していて翅脈の色も薄いので、羽化後間もない個体かも知れません。それでも、葉をつまんで正面から撮ろうとすると飛んで逃げて行ってしまいました。
2024年8月26日月曜日
コウヤツリアブ
これも先月撮ったものです。樹種不明の切り株の周りを2匹のコウヤツリアブ Anthrax aygulus が飛び回っていました。ときどき1匹が切り株に着地するのですが、もう1匹が近づいてくるとすぐまた飛び上がってしまい、2匹が同時にとまることがありません。縄張り争いでもしているのか、あるいは雌雄で追いかけっこでもしているんでしょうか。
カリバチやハナバチに寄生するハエで、虫孔の開いた枯木などではよく見かける種ですが、当ブログでは初登場だと思います。
2024年5月2日木曜日
エゾホソルリミズアブ♀
この日、何匹も見かけたきれいなミズアブです。なかなか近づけないのをどうにか1匹だけ撮影できました。調べてみるとエゾホソルリミズアブ Actina jezoensis の♀のようです。以前のブログに一度、やはりこの季節に撮ったものを出していますが、それ以来12年ぶりの登場となりました。
2024年2月15日木曜日
ユスリカの触角
♂のユスリカの触角です。
いつもの公園で虫仲間と枝を叩いていた時に落ちてきたのを持ち帰り、スタック撮影したものです。まず最初にこの豪勢な触角のアップを撮り、そのあとで全身像を、という予定だったのですがミスをして、標本を潰してしまいました。したがって種名も分かりませんが、体長1cmほどもある大型種だったのでオオユスリカかアカムシユスリカあたりかも知れません。
2024年1月12日金曜日
2023年12月14日木曜日
オオセンダングサミバエ
多分ノジギクだと思いますが、南に面した石垣のすそに咲いた白い花に来ていた、翅に斑紋のある小さなハエです。斑紋は異なりますが、頭部や胸部の様子が以前出したネッタイヒメクロミバエによく似ているのでミバエ科で探してみると、いくつかのサイトで紹介されているオオセンダングサミバエ Dioxyna bidentis という、よく似た種の画像が見つかりました。さらに学名で検索すると海外サイトに詳細な標本画像など多くの画像があって、見比べると細かな部分までよく一致するので、この種で間違いと思います。体長約3mm、翅端まで約4.3mmです。