2020年9月26日土曜日

カシノナガキクイムシ

 細長い甲虫が2匹、コナラの根方を歩きまわっていました。
この公園では数年前からナラ枯れが発生し、たくさんの立派なコナラの木が被害に会って伐採され、今でも園内各所に燻蒸処理された後の残骸が積み上げられています。
このナラ枯れを齎す張本人であるカシノナガキクイムシ Platypus quercivorus はまだ見ていなかったので、この2匹がそれではないかと思って採集して帰りましたが、深度合成画像を撮影して図鑑やネット情報で確認したところこれに間違いないようです。2匹とも♀でした。

採集時には2匹とも土埃にまみれ、かなり時間をかけて掃除をしたつもりですがゴミがたくさん残ってしまいました。

腹面です。この個体は残念ながら中脚の附節が左右とも欠損しています。

1枚目の写真の部分拡大ですが、前胸背板に数個の円い穴が見えます。これはマイカンギア(菌嚢)と呼ばれる器官で♀だけに見られ、この穴で共生菌を運ぶと言われています。その共生菌がこの虫の食糧であり、ナラ枯れを引き起こす要因にもなるそうです。

同じ個体です。

同時に採集したもう一匹は、なぜか翅を拡げた状態で死んでいました。



最後はナラ枯れによる伐採が始まった頃の公園内の様子(2016.02.05)です。

この時の被害で、二抱えもありそうな大木も含めて公園内のコナラはほとんど一掃されてしまいました。それから約4年、ナラ枯れは近所の他の公園でも見られますがこれほどの大規模な被害には至っていないようです。

上と同じ日、コナラの幹に開いた虫孔。

(2020.09.22・学が丘北公園にて採集)

2020年9月23日水曜日

オオハリアリ

 モチノキの幹を足早に上る細長い体型のアリが、なんとなく見慣れない種のような気がしたので採集して帰ったのですが、冷凍庫から取り出してよくみれば珍しくもないオオハリアリ Pachycondyla chinensis でした。


(2020.09.15・明石公園にて採集)

2020年9月22日火曜日

ヘクソカズラグンバイ初齢幼虫

 ヘクソカズラの葉の裏を歩くヘクソカズラグンバイ Dulinius conchatus の幼虫。体長約0.4mmくらいで、多分初齢でしょう。周囲にニョキニョキ生えた太い毛(トライコームと呼ぶそうです)に足を取られながらよちよち歩く様子はちょっと微笑ましい感じがします。




小さな体のわりに立派な口吻が目立ちます。やっぱり命の綱ですもんね。

(2020.09.01・明石公園)

2020年9月20日日曜日

ミジンムシ科の一種

 ヤツデの葉の裏にいたミジンムシ科の一種です。レンズを近づけるとすぐに歩きはじめたので、見失わないうちに採集しました。生時の体長は約1.2mmです。
ネット上でいくつかの画像が見られるチャイロミジンムシ Alloparmulus rugosus によく似ていて、保育社の甲虫図鑑の説明にもいくつかの特徴が一致しますが、なにしろ小さなもので確認できない部分も多く、ここではミジンムシ科の一種としておきます。




以下は深度合成画像ですが、冷凍殺虫で腹部と頭部が鞘翅と前胸背板の下に引っ込んでしまいました。




(2020.09.15・明石公園)

2020年9月19日土曜日

目撃情報・明石公園でゾウカブトsp.

今回は管理人自身の観察ではありませんが、面白い情報をいただいたのでここで紹介します。
教えて下さったのは神戸市垂水区在住のM.I.さん。以下その記録です。

2020年5月26日、明石公園内でゾウカブトの仲間(アクタエオンゾウカブト?)を目撃した。放虫と思われるが下半身が大きく損傷しており、恐らく放虫後に鳥類などの捕食動物に襲われたのではと考える。まだ生きており、桜の樹木上を登っていた。ゾウカブト類の放虫はあまり多くないのではないかと思う、とのことです。

以下、M.I.さんが撮影された写真です。




随分以前から外国産の昆虫、特にカブト・クワガタ類の野外への放虫による生態系への悪影響が懸念されていますが、いつもの公園でこんなことが起こっているということには驚きました。

2020年9月18日金曜日

フタヅノクンショウモ

いつもの公園の池のフタヅノクンショウモ Pediastrum duplex です。
珍しくもないものですが、見つかるのはいつもこちらのように細胞数が32個のものばかりで、一度64個の群体を撮影したいと思っていました。今回ようやくそれを見つけたものの、64個の内2個は中身が抜けてしまっていて、群体の形も少しいびつです。



外周の細胞の先端から、細い毛のようなものが伸びています。珪藻類の粘液糸のようなものでしょうか。

(2020.08.18・明石公園・桜堀にて採集)

2020年9月16日水曜日

昆虫写真展ご来場御礼

昆虫写真二人展は本日無事終了いたしました。ご来場いただいた皆様には厚く御礼申し上げます。

ところでこのカマキリはオオでしょうかそれともチョウセンでしょうか。

(2020.08.27・学が丘北公園)


2020年9月15日火曜日

モンキアシナガヤセバエ♂

 アラカシの樹液に来ていたモンキアシナガヤセバエ Nerius femoratus です。

体長約10mm。尾端を見ると♂のようです。

交尾器(?)を伸ばして排泄しました。


♀はこちら、交尾・産卵はこちらに出しています。

(2020.08.04・明石公園)

2020年9月14日月曜日

アリガタバチ科の一種(深度合成)

外出からの帰宅後、ふと気が付くと腕の上を小さなハチが歩いていました。ルーペで見るとアリガタバチ科(Bethylidae)の一種のようで、そのまま捕まえて冷凍庫に放り込みました。その深度合成画像です。




右触角の先が欠落しています。



あちらこちらゴミが残っていますが、ご勘弁。

(2020.09.06採集)

2020年9月13日日曜日

分裂するディセマトストマ

平べったい繊毛虫の一種 ディセマトストマ(Disematosutoma sp.)が分裂を始めていました。

すでに細胞の中央がくびれています。

約9分後。

約12分後。


分裂の瞬間は動画で。



(2020.07.29・明石公園 桜堀にて採集)

2020年9月12日土曜日

シバンムシ科の一種(Gastrallus sp.)

盛夏の頃、公園のサクラなどの葉を見上げて歩くとよく見つかる小甲虫です。
以前のブログで掲載したもの(2011.07.11,2014.08.17)と同種と思われますが、今回は採集して深度合成撮影をしました。保育社の甲虫図鑑第3巻の検索表を辿ればやはり Gastrallus 属に当てはまるようです。種名が挙げられている3種の中ではツツガタシバンムシ Gastrallus affinis かヒメツツガタシバンムシ G. dimidiatus なのですが、未記載種も多いようなのでここでは Gastrallus sp. としておきます。





(2020.08.06・明石公園にて採集)

2020年9月11日金曜日

カラヒゲムシの一種(Trachelomonas sp.)

 球形の殻を持ったカラヒゲムシ(トラケロモナス属)の一種です。いつもの「淡水微生物図鑑」には10種余りが掲載されていますが、その中でこのように滑らかな球形の殻を持っているのは Trachelomonas volvocina という種だけです。野外で最も頻繁に遭遇する種、とされているので可能性は高いと思いますが、他によく似た種が無いとも限らないのでタイトルはカラヒゲムシの一種としておきました。
シャーレの中で光に集まってくるのを実体顕微鏡で眺めると微小な粒々が盛んに動きまわるのが見えますが、バーガラスの下の狭い空間に閉じ込めると段々と不活発になり、やがて動きを止めてしまいます。
カラヒゲムシはミドリムシの仲間で、種によってさまざまな形の殻(ロリカ)を持っていますが中の細胞は基本的にはミドリムシと同じなんだそうです。





動画です。


動画などの撮影後、しばらく放置している間に水分が蒸発して押しつぶされてしまいました。硬い殻を持っていることが分かります。

内部の細胞にピントを合わせています。

(2020.07.28・明石公園・桜堀にて採集)