2024年9月25日水曜日

キリの葉のタバコカスミカメ

 キリの幼木の大きな葉を裏返すと、このタバコカスミカメ Nesidiocoris tenuis がたくさんついていました。
このカメムシを初めて見たのは約5年前で、やはりキリの葉の裏でした。この公園には大きく成長したキリの木は少ないのですが、幼木はいたるところに生えてきます。その葉では必ずと言って良いほどヒメイトカメムシが群れているのですが、タバコカスミカメが見つかる場所は限られていて、この日見つけたのも5年前に初めて見た場所の近くでした。
今回は交尾中のペアも多く、またヒメイトカメムシの死骸を吸汁しているものもいました。タバコカスミカメはアザミウマやコナジラミなどの農業害虫を捕食するため生物農薬としての利用が進められているようです。キリの葉に集まっているのは、粘つく腺毛に捕まった微小昆虫が目当てなのかも知れません。関係があるのかどうかわかりませんが、農林省のサイトを見ると、このカメムシが好むゴマとクレオメを増殖に利用する方法が紹介されていて、調べてみるとどちらの植物にも葉に粘着性の腺毛が存在するようです。

交尾中のペア。ヒメイトカメムシのように逃げ回らないので撮影は楽でした。

左が♀で、産卵管が見えます。

よく見ると、ヒメイトカメムシの脚の先あたりに口吻を突き刺していました。おそらくすでに死んでいたものだろうと思いますが、あるいはこんなに大きな獲物を襲うこともあるんでしょうか。


あちこち刺点を変えて吸汁しています。

ヒメイトカメムシと同様、粘着性の腺毛の間を自由に歩き回れるように特に適応しているのではないかと思います。

体長約1.5mmの幼虫。

(2024.09.17・明石公園)


2024年9月19日木曜日

タケノホソクロバの卵と若齢幼虫

 ササの葉を捲っていると、きれいに並んだ小さな卵が見つかりました。


俵の形をした卵は長さ0.6mmくらい。それぞれ端の方に赤い点が見えます。

何の卵だろうと考えていると、一緒に虫探しをしていたいつものお仲間が、すぐ近くの葉で小さな毛虫の集団を見つけました。タケノホソクロバ Fuscartona martini のようです。体長は2.8mmほどしかないのでまだ1齢か2齢でしょう。以前のブログにもう少し成長したものを出しています。

チャドクガの幼虫のように仲良く並んで葉を齧っていて、食べ進んだ後にはきれいに葉脈だけ残っています。

お尻からはきれいな緑色の糞。

食事中はなかなかお顔が見えません。

こんな顔です。

大変無駄のない食べ方ですね。

(2024.09.10・明石公園)

2024年9月13日金曜日

お尻の先に排泄物をくっつけて運ぶアザミウマの幼虫たち

 ノゲシの一種と思われる草の、菌類に寄生されて白っぽくなった葉の裏をルーペで調べていると、小さなアザミウマの幼虫がたくさんいました。ほとんどが腹端に排泄物の球をくっつけたまま歩き回っています。何のためにそんな荷物を持ち歩くのか知りませんが、こういう行動は以前にも何度か見たことがあって(こちらこちら)、アザミウマの幼虫ではよく見られる習性なのではないかと思っています。体長は0.5mmから0.8mmくらいで、どこかに成虫がいないかと探しましたが見つかりませんでした。








(2024.09.06・明石公園)

2024年9月10日火曜日

シンジュキノカワガの幼虫

 初めて見たシンジュキノカワガ Eligma narcissus の幼虫です。
以前この公園で幼虫を見つけたという話を虫仲間から聞いていたのですが、この日もそのご当人の案内で探しに来たシンジュの幼木で見つかりました。複数の木で大小数匹、大きいもので体長5センチほどあります。
シンジュキノカワガは全国で見つかっているようですが、それらはすべて原産地の中国大陸から偶然飛来した成虫が食樹のシンジュ(ニワウルシ)を見つけて産卵・繁殖したもので、暖かい間に2~3世代は発生するものの、日本の冬は越せずに全滅するということです。
冬はまだ先なので、この日見つけた幼虫たちが成虫になる時間はたっぷりあると思いますが、その次の世代はどうなんでしょうか。温暖化が進んでこのあたりでも一昔前に比べると冬らしい寒さの日がずいぶん少なくなっているように感じますが、この蛾も実はどこかで冬を越しているという報告がそのうち聞かれるのではないかという気もします。

この日見た中では大きめの幼虫。体長約47mmで、4齢くらいでしょうか。

こちらの小さいのは約23mm。

1枚目とは別の、大きめの幼虫の顔。

も少しアップで。

(2024.09.03・明石公園)

2024年9月8日日曜日

コクロヒメテントウ

 センダングサの葉を裏返すと、小さなテントウムシのペアがいました。上翅の先にオレンジ色の部分が見えることや雌雄の顔面の色の違いなどから、普通種のコクロヒメテントウ Scymnus posticalis だと思います。検索すると以前のブログにも10年以上前に出していました。特徴的な姿の幼虫はこちらにあります。






(2024.09.03・明石公園)

2024年9月5日木曜日

キイトトンボ

 普段トンボやチョウを追いかけるということはまずしないのですが、たまたま目の前にとまったので撮らせてもらいました。キイトトンボ Ceriagrion melanurum です。

このように腹部が鮮やかな黄色で先端背面が黒いのは♂だそうです。

(2024.08.27・明石公園)


2024年9月4日水曜日

キマダラカメムシの産卵と孵化幼虫

 3年前にもほぼ同じものを出していますが、サクラの葉裏で産卵していたキマダラカメムシ Erthesina fullo です。1か月近く前に撮った写真です。

ここ数年で急速に増えてきた外来種で、この公園でもいたるところで見かけますが、ちょうど産卵中に出くわす機会はなかなかありません。

反対側から。残念ながら見つけた時にはほぼ予定の数を産み終えていたようで、まもなく立ち去ってしまいました。

これは別の日に見た、セイタカアワダチソウの葉裏で孵化した幼虫たち。このカメムシは卵を産み付ける植物をあまり選ばないようです。

(2024.08.10,07.25・明石公園)


2024年9月1日日曜日

ヒラアシキバチ♂の羽化

 エノキの立ち枯れに、ヨコヅナサシガメの幼虫が集まっていました。昨年8月にヒラアシキバチ Tremex longicollis の産卵、この7月にはそれに寄生するオナガバチ類の産卵を見てきたのと同じ木です。今年のヒラアシキバチの産卵は時期を逃して見られませんでしたが、幹に突き刺さったままの産卵管の残骸を見ると、かなりの数が産卵に集まってきていたようです。
幹には今年のものと思われる脱出口が多数開いていてますが、中を覗き込むとかなり高い割合で脱出できずに死んだキバチの頭が見えます。穴が開いた途端、脱出する間もなくサシガメ幼虫に襲われたものでしょう。まだあちこちで口吻を差し込んでいる幼虫が見られました。
その中で、まだ穴の開いていない場所にサシガメ幼虫が集まっているのを見つけました。おそらく樹皮のすぐ下に脱出間近のキバチがいるのを嗅ぎつけてそれを待ち構えているものと思われます。以前にも同じ状況を見たことがあったので、邪魔なサシガメたちを追い払い、キバチが出てくるのを待つことにしました。
過去の経験からそれほど時間はかからないだろうと楽観していたのが結局3時間以上、懲りずに何度も集まってくるサシガメ幼虫を追い払いながら枯木の前に立ち尽くすことになりましたが、その甲斐あって出てきたのはかなり稀といわれる♂個体でした。
ヒラアシキバチは単為生殖とされていて、以前にも脱出した♀がそのまま同じ枯木で産卵するのを見たことがあります。ごくまれに出現する♂は繁殖には貢献しないだろうということですが、今回の♂も、同じ木で育った♀は既に羽化・産卵を済ませているはずなので、相手を見つけることは難しいと思われます。

ヒラアシキバチの脱出口に集まるヨコヅナサシガメの幼虫たち。

キバチはとっくに残骸になっています。

やがて顔を出すはずの獲物を待ち受けるサシガメ幼虫たち。気の毒ですが退去してもらいました。

サシガメを追い払ってしばらく待っても一向に変化が見られないので、ついにしびれを切らし、ポケットナイフで樹皮を薄く削ってみました。予想通り行動が表面直下まで達していて、奥の方にハチの頭が見えます。

やがて出口付近まで上がってきて、大顎で坑道の周囲を噛み砕きはじめました。

間もなく顔を出すかと期待しましたが度々作業を中断して奥の方へ退却したり、長い休止を挟んだりして仕事は遅々として捗りません。

2時間半以上かけてようやく頭が出てきました。


ここまで来て、前脚がなかなか抜けません。


反対側から。

ようやく全半身が出ると、後は順調でした。

ちょっと止まって触角をしごいています。

この後、全身が抜け出す瞬間はあっという間で撮り逃しました。

坑道から脱出すると一休みもなくどんどん幹を上っていくので、手持ちのプラ容器に身柄を一時確保し、しばらくして落ち着いたところで再び幹に戻しました。

体長は約29mm。

ちょうど羽ばたいたので腹部の色が見えました。こちらの♀とはだいぶ違いがあります。

(2024.08.23・明石公園)