2020年4月12日日曜日

顕微鏡写真に RawTherapee のフラットフィールド機能を

RAWファイルの現像には以前はアドビのCamera Rawを使っていたのですが、現在自分で使っているカメラにはすでにほとんど対応しなくなっていて、かと言って最新バージョンを使うためにCCを購入する気にもならないので数年前からは主にフリーソフトのRawTherapeeのお世話になっています。
これは基本的な色調やコントラスト、シャープネスなどに関して恐ろしく多機能なソフトで、実のところ未だよく理解も出来ず使ってもいない部分も多いのですが、その中にフラットフィールドという機能があります。これが顕微鏡撮影には非常に有用なのですが、せっかく無料で用意されているのにあまり知られていないようなので(新型ウィルス騒動のおかげで時間もあるので)、ここで紹介しておきたいと思います。
これは光学系や照明など被写体以外に起因して画像に現れる明るさや色のムラを取り除くために使われるもので、顕微鏡撮影の場合は照明ムラやコンデンサー・リレーレンズ、センサーのゴミなどの影響を打ち消すのに有効です。ただこの機能が使えるのはRAWファイルに限定されますが、色調やコントラストなど他の調整を施した後でも適用できます。


使い方は簡単です。まず補正したい画像を撮影した後、プレパラートを動かして何もない空白の部分を探します。と言っても完全にゴミもチリもないという状態はまず望めないので、ごく小さなものなら我慢します。そしてそのごく小さなゴミが見えなくなる程度に少しピントを外しますが、外す量が大きすぎると照度分布が変わるのでよくありません。その状態で撮影したものを補正用の画像として使用するのですが、その間コンデンサーの位置や絞り、カメラの角度など一切動かしてはいけません。露出も変わらないように、マニュアル設定の方が良いでしょう。
後は補正したい画像をRawTherapeeで開き、フラットフィールド機能を選んで、補正用の画像を適用するだけです。以下は作例です。

これが補正前の画像です。オリンパスBHCに短鏡胴のプランアクロマート40/0.65で偏斜照明、ニコンのHKW10Xにマイクロニッコール55mm F3.5をつけたD7000でのコリメート撮影です。盛大に出ている大小の影はコンデンサーやリレーレンズ、撮影レンズなどのゴミや傷によるものでしょう。被写体はMWSさんの珪藻プレパラートです。

同じ条件でもう1枚。

そしてこれが補正用画像。

補正後の画像です。偏斜による照明ムラや、ゴミ・チリの影が見事に消えています。

もう1枚も。

次はコンデンサを目一杯絞った画像です。通常ここまで極端に絞ることはありませんが、コリメート撮影でよく出る同心円状のムラや青っぽいハレーションが見えます。

上の補正用画像。

補正してかなりすっきりしました。まだ残っている黒い斑点はカバーガラスやスライドガラスに付着したゴミで、これはこの機能では取れません。

最後に少し補足説明を。フラットフィールド補正の調整項目にある「ぼかし半径は」デフォルトでは32となっていますが、この設定では小さな影は取り切れないので、0かそれに近い数値にした方がよいでしょう。この数値を小さくすると補正用画像のノイズを拾う可能性が高くなるそうですが、実際に試してみるとISO100や200の常用感度ではまず影響はないようです。被写体によって高ISOで撮影する必要がある場合も補正用画像の方はISO値を低くして撮影しておけば問題ないでしょう。

以上のように大変重宝な機能なのですが、実は私自身はそれほど使っていません。動き回る動物プランクトンを元気なうちにと倍率や絞りを変えながらどんどん撮影していく場合が多いので、補正用画像の撮影が追い付かないからです。撮影後、照明ムラやゴミの目立つ画像を見ながら後悔することも多いのですが。他には、昔のネガやポジの複写をする際の照明ムラの補正に使っています。

RawTherapeeは他にも面白い機能が多く、例えば「詳細レベルによるコントラスト調整」では特定の周波数域のコントラスト調整が出来て珪藻の条線の表現などに役立ちそうだし、長時間露光によるノイズをキャンセルするダークフレーム補正などは普通天体画像用ソフトにしか備わっていないものです。

RawTherapeeのダウンロードはこちら。頻繁にアップデートを繰り返して最新型のカメラにも次々と対応してくれています。またこのソフトのマニュアルであるRawPedia(日本語)はこちら。かなり専門的な解説が多く私のような素人にはかなり難物ですが、読んでいると勉強になることが多々あります。




0 件のコメント:

コメントを投稿