2021年8月19日木曜日

マルサヤワムシ科シナンテリナ属の一種(Sinantherina ?spinosa)

 初めて見たワムシの群体です。いつもの公園の、干上がっていることの方が多いような浅い池で採集しました。
球形の群体ということではじめはテマリワムシ科の一種だろうと見当をつけて調べていたのですが、この科でこれくらいの規模の群体を作るのは Conochilus hippocrepis のみで、その種であれば頭頂に1対あるはずの腹触手が見当たりません。胴部にもそれらしきものは見えないのでそもそもテマリワムシ科ではなさそうです。そこであらためて図鑑(日本淡水動物プランクトン検索図説)を眺めると、マルサヤワムシ科シナンテリナ(Sinantherina)属が形も似ていて、やはり群体を作ることが分かりました。日本で知られている2種が掲載されていますが、そのうちの Sinantherina spinosa という種が開いた時の頭冠の形や腹面に並んだ棘、また普通50個体前後の球形群体を作ることなどの特徴が一致し、有力候補です。


今回は採集当日と翌日、計2個の群体を観察しましたが、これは最初の群体です。見つけたときはもっと大所帯だったのですが、周囲のゴミから分離したりスライドガラスに移したりしている間にかなりの数の個体が離れて行ってしまいました。

群体の中心付近には孵化前の卵や幼体が集まっています。


このように側面から見ると以前掲載した同じマルサヤワムシ科のプチグラ属(Ptygura sp.)に形がよく似ています。この画像では上に向いて弓なりに張り出しているのがいるのが腹面で、多数の小さな棘が並んでいるのが見えます。足と胴部の間の背面にある突起は肛門で、上記プチグラ属の動画ではこの肛門から排泄する様子が見られます。

以下は翌日撮影したやや大きな群体です。

最初の群体に比べて内臓や卵の色がかなり薄く見えます。機材や撮影法は全く同じなので、理由が分かりません。


こちらは孵化したばかりの幼体が多いようです。

微分干渉です。上記図鑑によれば、S. spinosa は「頭冠は開くと幅広い卵円形または四辺形に近い」とあります。


群体中心部の幼体と卵です。卵にはすでに眼点が見えるものもあって、孵化間近なのでしょう。

次の動画は2番目の群体です。


(2021.08.04・明石公園の池にて採集)

0 件のコメント:

コメントを投稿